下腿のおもな病気 つづき
◎その他の病気
マラソンやジョギングを相当おこなっている人で、運動時に下腿の痛みが現れるようになった場合には疲労骨折を疑う必要があります。また下腿の外側や後面に痛みやシビレ、触った感じが鈍い、異状にしびれる、といった知覚障害を覚える場合には、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの腰部の疾患を疑う必要があります。原因不明の下腿の痛みや腫れがあり、徐々に悪化する場合には腫瘍の発生を疑う必要もでてきます。
2011年10月31日
下腿のおもな病気
◎下腿三頭筋断裂
ふくらはぎにある下腿三頭筋には肉離れが良く起こります。肉ばなれは筋肉が、自分自身の強い収縮力やが外から加わった強い力によって部分的に断裂することをいいます。断裂は筋肉全体に起こることはまれで、たいていの場合筋肉の一部のみに起こります。
肉離れのでは症状のあらわれ方と圧痛(押して痛む場所)が何処にあるのかが診断のポイントとされます。スポーツの最中にふくらはぎに急に傷みがあらわれ、さわってみると筋肉に圧痛があり、じっとしていればそれほどではないが、その筋肉に力を入れようとすると強い痛みが生じるという場合は、肉離れがおこったと考えてまず問題ありません。
肉離れの治療は受傷直後は、局所の安静、患部の冷却と圧迫が中心になります。肉離れが生じているのに痛みをこらえて無理に歩き回っていると、痛みも強くなるし、回復も遅れがちになります。安静は、単に痛みの問題だけでなく治りを早めるうえでも重要です。このため重症の肉離れではギプスで固定することもあります。
また受傷後には筋肉の損傷がおこった部位に内出血や組織の腫れが生じます。患部を冷却し、伸縮性のある包帯などで適度に圧迫してやれば腫れや内出血を抑えることができます。痛みが非常に強い場合には、市販の痛み止めの薬の中には内出血の傾向を強めるものもありますので注意が必要です。また受傷直後の長時間の入浴、マッサージは内出血や腫れを強める恐れがあるので、控えましょう。
肉離れを起こした筋肉は、損傷の程度にもよりますが、けがのあと三週間ほどである程度治ってきます。肉離れを起こした部分は正常な筋肉に比べてもろい組織で治る傾向があり、このために同じ場所で再度肉離れを起こすことが少なくありません。これを防ぐ確実な方法はありませんが、運動中に肉離れだと感じたら早急にまず、圧迫包帯とそのうえからのアイシングをして早めに筋肉内で起きている内出血を止めることが一番治りがよい方法となります。運動する人や、トレーナー、コーチなどもこういった知識をもっておくと治りの悪い肉離れになりにくくなるでしょう。
2011年10月30日
膝関節のおもな病気 つづき
◎ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
ジャンプを繰り返しおこなうことで引き起こされる典型的な使いすぎ症候群です。膝蓋腱の付着部である脛骨粗面(膝下前面の突出部)から腱実質部への繰り返される牽引力による微小断裂の結果といわれています。オスグッド・シュラッター病とは同様なメカニズムで発生する疾患で、年代による発症様式の違いと考えられます。
治療では運動の質と量の軽減または休止、十分なストレッチ、スポーツ終了後のアイシング、およびストレッチ、膝バンドなど、整体的には、整形外科で見落としている、膝の捻れや、前後のずれ、半月板のずれ、大腿四頭筋の付着部(骨盤)のずれによる筋肉の緊張など・・・。
そういったところを丹念に見ていくと、整形外科では見ていませんから、ほとんどの場合そういった病態を整体的に治療することにより、ふだんのトレーニングもおこないやすくなります。
◎ベーカー嚢腫
膝関節の後方にあり、膝関節と交通がある膝か嚢包というふくろに関節液が貯留したもので、変形性関節症やリウマチが基礎にある場合に起こります。
病状は膝屈曲の制限とこわばり感があり、治療は穿刺廃液をおこなう場合がほとんどですが、再発を繰り返すことが多く、場合によっては手術で嚢包全体を切除されることもあります。
2011年10月29日
膝関節のおもな病気 つづき
◎ランナーひざ(ランナーズニー)
これは単一の病体についての名称ではなく、ランニングを主たるスポーツ活動とするスポーツマンの膝痛に対する不特定の用語と定義され、診断のつかない膝痛、変形性膝関節症、腸脛靭帯炎、オスグッド・シュラッター病、膝蓋腱炎、鵞足炎など多岐にわたる疾患が含まれる、いわゆる使いすぎ症候群の総称です。
治療としては、ランニング量の軽減、入念なコンディショニング、走路やシュウーズの検討また、下肢の形態や走り方に原因が考えられるばあには、足底挿板の使用やフォームの矯正などが必要です。その裏に疾患や外傷が隠れている場合もあります、決定的な疾患がない場合には医療機関での治療による治癒を期待することは難しく、長期にわたりランナー本人が向き合っていかなけらばならない病態といえますが、整体的には、整形外科で見落としている、膝の捻れや、前後のずれ、半月板のずれ、大腿四頭筋の付着部(骨盤)のずれによる筋肉の緊張など・・・。
そういったところを丹念に見ていくと、整形外科では見ていませんから、ほとんどの場合そういった病態を整体的に治療することにより、ふだんのトレーニングもおこないやすくなります。
2011年10月27日
膝関節のおもな病気 つづき
◎半月板損傷
半月板は膝関節内の大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨性のクッションで、若年者ではスポーツによる損傷が、中高年では変性断裂(年齢による劣化)がおもです。ACL損傷(前十字靭帯損傷)を放置した場合には、内側半月の断裂が二次的に起こることが良くあります。
症状は半月損傷の部位に一致した痛み、引っかかり感があり、損傷が大きな場合には損傷半月が反転して引っかかり、膝の伸展障害が出ることがあります。
疼痛や機能障害の程度により、筋力強化による保存療法または関節鏡手術による半月板の切除や縫合がおこなわれます。また、先天性に半月板が特殊な形態をしていることにより損傷が起こりやすいことがあり、円盤状半月といいます。治療は関節鏡で切除がおこなわれます。
◎オスグッド・シュラッター病
成長期特有のスポーツ障害で、筋収縮による繰り返しの牽引ストレスが成長軟骨にかかり引き起こされるいわゆる、使いすぎ症候群です。成長痛ともいわれるもので、ピークは13歳ごろです。症状はスポーツ後の脛骨粗面(膝下前面の突出部)の痛み、はれ、骨性の隆起などで、診断はよういとなりますが、骨腫瘍の後発部位と一致するためスポーツ専門医の受診が必要です。
2011年10月26日
膝関節のおもな病気 つづき
◎内側側副靭帯(MCL)損傷
膝の外側からの強い外力が加わり、膝の内側に走るMCLが断裂します。断裂時には断裂音を本人が感じることがあります。大腿四頭筋の起始部での損傷が多く、膝関節内側の近位部中心に痛みがあります。程度は捻挫程度のものから内側の関節支持機構が完全に断裂するものまであり、後者は交通事故などの強力な外力が加わった場合にみられ、他に半月板や前十字靭帯、後十字靭帯などにも損傷がおよんでいることもしばしばです。
治療では弾性包帯固定やブレースなどを用いた保存療法が基本ですが、重度損傷の場合には早期の手術療法が必要になることもあります。また、初期に保存療法が選択された場合でも、のちに機能不全がが残存した場合には、再建術がおこなわれる場合もあります。靭帯の付着部が骨片つきではく離した損傷では、骨片を元の位置に戻して固定すれば靭帯機能は回復します。
◎後十字靭帯(PCL)損傷
スポーツや交通事故などで、ひざを前方から強打して受傷することがほとんどです。仰向けで両膝を立てて横からすねの高さを見比べ、損傷側の高さが低ければ後十字靭帯の損傷の可能性が考えられます。確定診断にはMRI検査が有効です。
この損傷もひざ周囲筋力の強化だけで日常生活では支障が出ないことが多いのですが、痛みや膝不安定性のために靭帯再建術が必要になる場合もあります。
また、この靭帯でも付着部が骨片つきではく離した損傷では、骨片を元の位置に戻して固定すれば靭帯機能は回復します。
2011年10月24日
膝関節のおもな病気 つづき
◎前十字靭帯(ACL)損傷
単独損傷はスポーツ外傷がほとんどで、接触型の損傷と非接触型の損傷があります。接触型は他のプレーヤーと接触することによって膝関節に強い外力が加わりおこる損傷です。
それに対して非接触型の損傷は、ジャンプやその着地、カッティング、急激なストップ動作など、大腿四頭筋に急激に強い収縮力が起こったときやピボットシフトなどのひねり動作で損傷します。いずれの損傷でも、受傷時に本人がバキッという断裂音を聞いていることがしばしばです。
受傷直後には体重がかけられないほど痛み、時間とともに膝関節がはれてきます。診断は特徴的な受傷機転と断裂音、関節血腫の存在、診察所見、さらにMRI検査からわかります。
さらにMRIでは半月板やそのほかの靭帯、関節面の合併損傷の有無などが確認できます。
治療は早期に局所のアイシングにより膝の腫れを防ぎ、痛みが軽快したら膝の屈曲伸展の訓練をおこないます。大腿四頭筋の萎縮が必ず続発しますので、膝の動きが可能になればハーフスクワットやマシンをもちいたひざ周囲筋力強化をおこないましょう。1〜2ヶ月の時間経過とともに痛みはほとんど消失し、膝の動きも回復します。日常生活レベルの活動には問題がなくなります。
その後、活動性が高い場合、すなわちスポーツを今後も継続したいばあや膝に負担がかかる仕事の場合には手術的に靭帯再建をおこなう必要があります。再建術をおこなわないと膝の不安定性のために思い切りの動座ができませんし、無理にスポーツをすると半月板や関節軟骨に二次的な損傷が起こり、将来、変形性膝関節症になるリスクが高くなります。いっぽう、手術をしない治療を選んだ場合には、ジャンプやカッティング動作、ひねり動作など、自分でこわいと思う動作を徹底的に避けることと、筋力強化訓練の継続が必要です。
受傷時には診断がつかず、時間がたってから診断がついた場合でも、治療の考え方は同じです。ただ、最初の受傷から時間経過が長い場合には半月板などの合併損傷の率が高くなりますから、MRIで調べて、必要な治療を受けなければなりません。
また、靭帯の付着部が骨片つきではく離するタイプの損傷もありますが、これは骨折の治療に準じて、早期に元の位置に骨片を戻して固定すれば靭帯機能は回復します。
2011年10月23日
膝関節のおもな病気 つづき
◎O脚変形
子供のO脚には生理的内反膝のほかにブラント病、くる病などの代謝性疾患、軟骨無形成症などの骨系統疾患、外傷や骨髄炎後の成長障害によるものなどがあります。
生理的内反膝は成長にともなう一時的なもので、1〜2歳でO脚であったものが、3〜4歳でX脚気味になり6歳ごろにX脚もきえます。ブラント病は歩行開始が早く、関節が柔らかい子ども、また肥満児に多く、そのため生理的内反膝に力学的要素が加わり生じるものとも考えられています。早期には装具による治療を行い、それが不十分な場合には手術療法が必要になります。
◎靭帯損傷
多くはスポーツによる損傷で、前十字靭帯(ACL)、内側側副靭帯(MLC)、後十字靭帯(PLC)の順に多く見られます。内側側副靭帯と前十字靭帯の合併損傷も多く見られます。交通事故などの大きな外力で受傷したばあいには複合靭帯損傷(二本以上の靭帯が損傷)のことが多く、周囲組織の広範な損傷を伴います。
2011年10月22日
膝関節のおもな病気 つづき
◎膝関節遊離体
関節表面からはがれ落ちた関節軟骨や小骨片が膝関節内を動き回ることがあります。関節ねずみともいわれます。関節液から栄養を受けて、徐々に大きくなります。関節にはまり込むと激痛と引っかかり、可動域制限などの症状が出ます。それが再び動くようになると、関節がスムーズに動くようになり、そのような症状を繰り返します。関節鏡手術による摘出が必要です。
◎離断性骨軟骨炎
スポーツ活動を行う10代の子供に多く見られます。関節面の骨軟骨がはがれるもので、進行すると骨軟骨片が遊離体となります。関節軟骨の温存のために早期発見、早期治療が必要です。
治療法は骨軟骨片の状態で決まります。成長期に発症した場合にはスポーツ活動の停止などの保存療法や、手術療法などがあります。骨軟骨片がはがれてしまったあとでは、元の位置に戻して固定する手術が必要になります、骨軟骨片が粉砕してしまっているときには元に戻すことができず、関節軟骨の修復術が必要になることがあるでしょう。
◎色素性絨毛結節性滑膜炎
関節の滑膜組織が限局性またはびまんせいに異常増殖するまれな良性疾患で、膝関節に最も多く見られます。症状は、限局性のもの(結節型)では関節の引っかかり感のみのことが多いですが、びまん性(びまん型)の場合には関節内の血液貯留(関節血腫)を繰り返し、痛みを伴います。関節血腫を繰り返す場合には関節破壊へと進行します。治療は、結節型の場合には摘出術により治癒が期待できますが、びまん型の場合には完全な切除は難しく、短期または長期に再発を繰り返すこともしばしばです。再発を何度も繰り返し、関節破壊、骨破壊まで進行した場合には、人工関節置換術が必要になり、さらに周囲に広範囲に広がってしまったものでは切断術がおこなわれるばあいもあります。
2011年10月20日
膝関節のおもな病気 つづき
◎関節リウマチによる膝関節の障害
全身性疾患である関節リウマチでは膝関節もおかされ、歩行障害や膝関節拘縮などの症状が出現します。変形性膝関節症では膝関節の内側または外側、あるいは膝蓋大腿関節のいずれか一箇所が選択的に悪くなることがほとんどですが、関節リウマチの場合には関節全体が悪くなることでレントゲン写真上は鑑別されます。そのほかの関節症状や血液検査などからも鑑別されます。
膝関節に対しての治療としては関節可動域訓練、大腿四頭筋強化訓練などの理学的療法、ヒアルロンやステロイド薬の間接内注入法がおこなわれ、さらに機能障害が著しい場合には人工関節の適応となります。
◎特発性骨壊死
大腿骨の下のところや脛骨の上のところ、まれに膝蓋骨に骨壊死が生じることがあり、安静時や歩行時の痛みを伴います。特徴的なことは、レントゲン検査で骨壊死像がはっきりしていない発症初期に安静時痛や夜間痛が強いことです。したがって、痛みの強い初期には診断がつかず、半年ほど経過してから診断がつくこともあります。MRI検査では早期から診断が可能です。その後、激痛は消失しますが、時間の経過とともに変形性膝関節症へと進展し、それによる症状が出現します。
治療では、人工膝関節置換術がおこなわれますが、変形性質関節症まで進展していない初期のもので、50−60歳以下の人であれば、骨切り術と骨移植が選択される場合もあります。骨壊死の部位や範囲によっては症状が軽く、消炎鎮痛剤内服、ヒアルロン酸の膝関節内注入などの保存的療法で経過を見ることもあります。
2011年10月17日
膝関節の主な病気
◎変形性膝関節症
中年以降に増加する膝関節の変形性疾患で、老化現象のほかに外傷、膝関節にまたがる筋肉のバランスによる膝の捻れ、大腿骨と脛骨のずれ、関節炎、骨壊死に続発しておこる二次性のものなどがあります。発症に関連する因子には、年齢(40歳以上)、肥満な度が上げられ、やや女性に多い疾患です。遺伝性に全身的な変形性関節症を発症する疾患もあります。
初期には膝関節の痛み、特に階段の上り下りや正座での痛み、長距離歩行後の痛みなどで気づきます。ほとんどの場合では膝の内側が悪くなります。進行すると膝はO脚に変形し、短時間の歩行でも痛みを感じ、膝関節に関節液がたまってはれる、膝の曲げ伸ばしの制限が見られるなどの症状が出てきて、日常生活で苦痛を感じるようになります。膝蓋大腿関節(お皿の裏側)の変形性関節症では、起立動作時の痛み、階段昇降での痛みが膝蓋骨の周囲や裏側に見られます。
症状、膝のレントゲン検査、関節液の状態などから診断されます。レントゲン検査は立位で撮影したものがよりよくわかりやすいでしょう。それから、膝のレントゲン検査の重症度と本人が感じる症状の程度とは必ずしも一致しません。また、高齢者では加齢による骨の変化が多少は見られるのがふつうですから、重症度はレントゲン検査の所見だけで決まるものではなく、症状を含めた全体として判断される必要があるでしょう。
治療法では、膝から上の筋肉を鍛える練習や、足の裏に足底板をいれたり、サポーターの装着、ヒアルロン酸の関節内注射、シップ薬の塗布、外科的には関節鏡手術や骨切り術、人工膝関節置換術などの手術療法があります。専門医と相談のうえ、治療法の決定が必要です。
膝の上の筋肉を鍛える練習によっても痛みなどを改善されることも多いですから、そのときの症状に合わせた大腿四頭筋の強化法をするといいでしょう。
2011年10月16日
大腿その他の疾患
大腿の上部、外側に原因のはっきりしない痛みがあり、特に夜間に強く、シビレや感覚の異常がある場合にはこの部分の皮膚の感覚を伝える神経(大腿外側皮神経)の障害の可能性があります。また特に思い当たる原因がないのに大腿に痛みや腫れがあらわれ、時間とともに徐々に悪化するような場合は主要などの可能性もありますので、そういった場合は専門の診察が必要です。
大腿部の痛みは股関節や腰部の病気でも生じることがあり、特に子供では股関節の病気で大腿の痛みを訴えることが良くあります。またときどき鼠径ヘルニアでも大腿の痛みを感じることがあります。
2011年10月15日
大腿部のおもな病気
◎大腿四頭筋肉ばなれ、ハムストリング肉ばなれ
肉ばなれは筋肉が、自分自身の収縮力や外から加わった強い力によって部分的に断裂した状態をいい、スポーツに伴っておこることが多い外傷です。ほとんどの場合断裂は筋肉の一部のみにおこり、筋肉全体が断裂することは極めてまれです。肉離れの診断では症状のあらわれかたと圧痛(圧迫したときの痛み)が何処にあるかが診断のポイントになります。スポーツの最中に急に傷みがあらわれ、傷むあたりを触ってみると筋肉に圧痛があり、その筋肉に力を入れようとすると強い痛みが生じる場合は、肉離れと考えてまず間違いないでしょう。
大腿の場合、前面に痛みがあれば大腿四頭筋の損傷、後面にあればハムストリングの肉離れを考えます。前者では膝を伸ばそうと力を入れたとき
、後者では膝を曲げようとしたときに痛みが生じます。
肉ばなれは手術を必要とすることはほとんどありません。怪我をした直後には筋肉の損傷部で内出血や組織の腫れが生じます。これが過度におこると治りが遅れるので、受傷直後はなるべく安静にして患部を氷などで冷やし、さらに伸縮性のある包帯などで適度に圧迫してはれや内出血を最小限に抑えるようにします。受傷直後の長時間の入浴やマッサージは内出血や腫れを強める恐れがあるので、控えましょう。
肉ばなれは再発することがあるので、スポーツ復帰は決してあせることなく軽いジョギングなどから始めていき、ダッシュやジャンプなど筋肉の強い収縮を伴う動作は十分肉離れが治ってからさいかいするように。しましょう、また筋肉の損傷部はかたくもろい組織となったまま治る傾向があるので、再発予防のためには筋肉のストレッチを無理のやい範囲でおこなっていくことも大事です。
2011年10月13日
股関節部のおもな病気 つづき
◎大腿骨近位部骨折
若年者で交通事故など外傷に伴う強い外力によっておこるものと、骨粗しょう症の傾向のある高齢者で転倒など比較的弱い外力によって生じるものがありますが、後者のほうが圧倒的に多く、高齢化により現在では毎年10万人以上の人が受傷しています。
大腿骨近位部の骨折は、骨折の部位により大きく二つに分けられ、治療法も異なりますが、どちらのタイプでも基本的に手術が必要です。骨折が大腿骨頭の球状の部分のすぐ下で生じるものは大腿骨頸部内側骨折と呼ばれます。このタイプの骨折では、ずれの程度によって骨折部を固定する手術か、大腿骨頭を取り除いて代わりに金属でできた人工の骨頭を入れる手術がおこなわれます。
もう一つのタイプは、骨折が大腿骨頸部の直下ではなく少し下の部分で起こるもので、大腿骨頸部外側骨折と呼ばれます。このタイプの骨折では通常骨折部を金属で固定する手術がおこなわれます。
以前、よい手術法がなかった時代にはこの骨折により寝たきりになり、ついには亡くなられる人が多かったことが知られています。このため現在ではこの骨折がおこった場合、高齢者であってもなるべく早く手術がおこなわれ、リハビリを開始するというのが治療の原則になっています。高齢者で転んだあと股関節部に痛みがあり歩けなくなった場合には、この骨折が疑われます。
2011年10月12日
股関節部のおもな病気 つづき
◎変形性股関節症
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減ったために関節の痛みや動きの制限が生じ、立位や歩行が困難になる病気です。特別な原因がないのにおこる場合(一次性変形性股関節症)と以前になにか別の病気があり、これが原因となっておこる場合(二次性変形性股関節症)があります。後者の場合、原因としては臼蓋形成不全、先天性股関節脱臼で十分な整復が得られなかった場合、大腿骨骨頭壊死、以前の骨盤や大腿骨の骨折、細菌の感染などがあります。
症状として初期の変形性股関節症ではおもな症状は長時間の歩行、立位の後の股関節部の痛みです。人によって歩き始めた瞬間やイスから立ち上がった瞬間に痛みを覚えることもあります。進行すると痛みは強くなり、また短時間の歩行や立位でもすぐに痛みが現れるようになります。また関節の動きが悪くなるため、股関節を深く曲げる必要のある動作ができなくなり、たとえば足の指の爪が切れない、靴下がはきづらいなど日常生活に支障をきたすようになります。
治療としては変形性股関節症では、基本的に一度悪化してしまったものを良い状態に戻すことは現在の技術では困難です。したがって痛みがそれほどひどくなければ整体的な治療を受けつつ、今以上に悪くしないようにすることも大切になってきます。
痛みが強くて日常生活に支障をきたすようであれば手術による治療が行われます。
手術の方法はおもに二通りあります。軟骨がすり減っている部分にかかる負担を減らすように骨の形を整える骨切り術と人工の関節を挿入する人口関節置換術がそれで、股関節の状態や年齢を考えたうえで適切な方法が選ばれます。年齢が若い場合にはこのほかに関節固定術がおこなわれることもあります。
2011年10月 9日
股関節部のおもな病気 つづき
◎ペルテス病
就学前から小学生の特に男児に多く見られる大腿骨頭の壊死性変化で、成長期に起こるため大人とは異なった経過をたどります。症状はは行が中心で、股関節の動く範囲の制限も見られます。成人の場合と異なり痛みの訴えがそれほど強くないことが多く、は行があるまま運動を続けていることも少なくありません。診断にはレントゲン検査が有効で、レントゲン写真で特有の骨頭の変化があればペルテス病と診断されます。また特に早期の症例ではMRIも使われます。
治療では装具を使って骨頭の変性が生じるのを防ぐ方法が行われます。骨頭の変性が生じてしまった場合には将来的に変形性股関節症の発生が考えられますから、変形性股関節症が起こりにくいように骨の形を整える骨切り術が行われることがあります。
◎大腿骨頭壊死
大腿骨頭は丸い部分のほとんどが軟骨でおおわれ、血液の循環は骨頭の付け根の狭い部分を通してのみおこなわれます。もともと血液の循環が制限されているため、何かをきっかけに骨頭への血液の供給が低下しやすく、そうなると細胞が死んで壊死と呼ばれる状態になります。骨は硬い組織ですので壊死が生じても直後には目立った変化があらわれませんが、時間がたつにつれ骨が弱くなって骨頭の一部が陥没し、股関節に痛みが生じるようになります。この時期になるとレントゲン検査でも骨頭の形がはっきり変わって見えるので診断は容易になりますが、初期で陥没が生じる前の状態ではレントゲン検査による診断が難しいこともあり、この場合にはMRIや骨シンチグラフィーなどの検査が必要になります。
大腿骨頭壊死は原因がはっきりしないこともありますが(特発性大腿骨頭壊死)、長期にわたる過度の飲酒が壊死をひきおこすことが知られています。ほかに大腿骨頸部の骨折で骨折部を固定したあとに骨頭の壊死が生じることがあり、また他の病気の治療のため投与された副腎皮質ステロイド薬が骨頭壊死を引き起こすこともあります。
整形外科的な治療では、人工股関節置換術がおこなわれますが、若年者では人工関節の耐久性の問題を考えて股関節骨切り術がおこなわれることもあります。
2011年10月 5日
股関節部のおもな病気 つづき
◎大腿骨頭すべり症
(大腿骨骨端線離解骨折を含む)
成長期の子供の骨には骨の両端に骨が成長するための骨端線と呼ばれる部分があります。ここはふつうの骨にくらべて組織がやわらかいため、大きな力が加わった場合にはここで骨にずれが生じてしまいます。子供の場合、大腿骨頭に骨端線があり、交通事故などで大きな力が加わったばあにはこの部分がずれて、急性型の大腿骨頭すべり症(あるいは大腿骨頭の骨端線離解骨折)と呼ばれる状態になります。いっぽう、10代の特に男性では特別にけがなどしていないのに徐々に骨端線部がずれてくることがあり、慢性型の大腿骨頭すべり症と呼ばれます。慢性型のすべり症は左右両方の股関節におこることが多く、何らかの体質的な要因が関与していると考えられています。また、急性型の中にもそれほど大きな力がはたらかなくてもずれが起こる症例もあり、このような場合にも慢性型と同様、何らかの体質的な要因が関与していると考えられています。
大腿骨頭すべり症の症状は股関節部の痛みですが、慢性型の場合、痛みは立ったときや歩行時にあるだけで通常安静時にはありません。診断ではレントゲン検査が重要ですが、初期の症例ではずれがごくわずかで、診断が難しいことがあります、たんに骨盤のずれによる股関節部の痛みの場合も多いので、そういった方には骨盤の矯正をすることと、股関節をまたいでいる腸骨筋や大腰筋などを上手に緩めることにより痛みが亡くなる場合も多くあります。
整形外科的な治療では、急性型では通常手術が行われ、骨端線のずれを整復して手術用の特殊なねじなどで固定します。慢性型でも手術が行われることが多く、ずれの程度と病気経過により骨端線の固定か骨の形を整える手術(骨切り術)が行われます。
2011年10月 3日
股関節部のおもな病気
股関節は骨盤と大腿骨をつなぐ大きな関節です。骨盤側はソケットのような形をしていて臼蓋(きゅうがい)と呼ばれ、そのくぼみの中にボールのような形をしていて大腿骨頭と呼ばれる大腿骨の端部がはまり込んでいます。股関節は体重を支える重要な関節の一つで、股関節に異常があると立ったり歩いたりが困難になってしまいます。
◎先天性股関節脱臼
新生児や乳児で、大腿骨頭が骨盤の臼蓋のなかにきちんとはまらずに臼蓋から外にずれた状態になっていることがあり、先天性股関節脱臼と呼ばれます。はっきりした原因はわかっていませんが、遺伝的な要因、生まれたあとの股関節の位置のいずれもが発生に関係しているといわれています。
発生率はおよそ新生児1000人に一人で、女児に多く、女児の発生率は男児の5〜10倍にもなります。
早期発見、早期治療が重要です。治療にはまず装具が用いられますが、一歳未満で診断されて治療を始めた場合には装具による固定だけでたい体よい結果が得られます。逆に一歳以降に治療を始めた場合には装具だけでは完全に整復できない場合が多くなります。
先天性股関節脱臼が完全に整復されないまま成長すると、正常では大きくくぼんでいるはずの臼蓋がずっと浅い形となり、大腿骨頭が臼蓋のなかにしっかりはまり込めない状態になることがあります。これを臼蓋形成不全といいます。臼蓋形成不全があると変形性股関節症になりやすいので、症状が強くなくても変形性股関節症の発生を防ぐための手術が行われることもあります。
2011年10月 2日
手関節のおもな病気 つづき
◎手根管症候群
手首から2〜3センチ先にある手のひら部分で正中神経が手の骨と靭帯で囲まれた手根管という管を通過します。この部分で神経が靭帯により徐々に圧迫を受けてまひを生じる病気です。特徴的な症状は指先のシビレと夜間痛で、夜間から朝方にかけて手がじんじんシビレ、痛みを感じたり、目が覚めたときにシビレを感じたりします。痛みはときに上腕や肩まで感じることがあります。朝起きると手のむくみや指のこわばりを自覚することが多く、ときに腱鞘炎も合併します。
しびれは指先が中心で、親指、人差し指、中指と薬指の親指側半分に生じます。女性に多く(90パーセント以上)、閉経期や妊娠・出産時などホルモンのバランスが変化したときに症状が出やすい傾向にあります。両側の症状が出ることもあります。進行すると母指球(親指の付け根のふくらみ)の筋がやせて(筋萎縮)、指先でのつまみ動作が難しくなります。
手首を手のひら側に曲げた状態を数分間保つと痺れが誘発されます(ファーレンテスト)。などでわかります。
整体的な治療では、手首、前腕、肘、肩周りなどをよく弛めます。胸郭出口症候群からくる症状のときもありますから、頸椎の捻れや、胸椎のバランスもよく診て、左右差などや、筋肉のかたまりなどがあったら入念にほぐしておきます。
◎書けい
字を書こうとすると手が震える、うまく手が動かないなどの症状が出ます。手自体の異常はなく、心理的要因が関与しており、筋緊張異常(ジストニア)の一種と考えられています。うまくおこなえない動作以外のほかの動作をするときには異常が出ないのが特徴です。書字以外に、キーボードをうまく打てない、楽器を弾きにくいなどの症状を示す場合もあります。
精神安定剤の内服がされますが、さまざまな日常におけるストレスなどがいちばんの影響となっていることがおきな原因となりますから、それらを取り除くことや、自身の考え方に気づくようなカウンセリングが必要となるでしょう。
2011年10月 1日