体幹部のおもな病気
◎胸部脊髄症
背骨のうち胸椎の加齢的変化により、背骨の辺縁の骨の突出(骨棘)ができたり、背骨の関節が肥大したり、椎間板が変性し突出したりして、背骨の中にある脊髄が圧迫されて体幹や両足のまひが生じたものが胸部脊髄症です。中年以降に見られ、女性より男性に多く見られます。
はじめは足がしびれる程度ですが、しだいに歩きにくくなり、足の力が弱くなったり、胴体から下の感覚がにぶくなります。進行すると排尿障害なども発生します。MRIにより胸椎部の脊髄が圧迫されてつぶれているようすが観察されます。
胸部の脊髄症をきたす病気には脊髄腫瘍、椎間板ヘルニア、脊椎炎、骨粗しょう症に伴う椎体骨折、靭帯骨化症など、他にも色々なものがあります。
進行すると治りにくい病気なので、両足がしびれたり、あるきにくくなったらすぐに専門医の診察を受けるようにしましょう。
◎胸部椎間板ヘルニア
胸椎の椎間板ヘルニアによっても胸部の脊髄症をきたします。両足がしびれたり、歩きにくくなり、進行すると高度の歩行障害や下肢の筋力低下や知覚障害、排尿障害をきたすことは胸部脊髄症と同様ですが、しばしば背部痛や胸部痛を伴ったり急性に発症することが多い点が異なります。ヘルニアのある高位以下の体幹の知覚障害、下肢の深部腱反射亢進、上肢の症状がないことより胸髄の異常を疑い、MRIにより診断されます。腰部脊柱管狭窄症でも両足がしびれたり、歩きにくくなりますが、この場合には下肢の深部腱反射は低下したり、消失します。
治療では、下肢のまひや歩行障害が出始めたら早めに手術がおこなわれます。手術ではヘルニアを切除し背骨の固定術をおこなうのが一般的です。
2011年11月30日
頸椎のおもな病気 つづき
◎筋性斜頸
くびが片方に傾いている状態を斜頸といいます。最も多くみられるのは筋性斜頸です。首の前面を斜めに走っている胸鎖乳突筋という筋肉が生まれたときからかたくつっぱるために起こります。胎児の子宮内での位置が発生に関係し、骨盤位分娩児や難産で多くみられるとされています。
生まれたばかりの赤ちゃんがいつもいっぽうを向いていて、顔を傾けるのと反対のくびにしこりがあれば、筋性斜頸が疑われます。90%の子供では自然に治ります。毎日、母親や父親が時間のあるときに子供の胸鎖乳突筋を良くマッサージしてあげるのも必要でしょう。しこりが固まってしまうとなかなか自然には治りにくくなってしまいます(筋肉が固まり変性した状態になってしまいます、一度筋肉が変性してしまうとなかなかもとには戻らなくなってしまいます)のでふだんから胸鎖乳突筋をやさしく伸ばしてあげたりまた、片方にだけくびが向かないようにしてあげましょう。
斜頸がいつまでも治らないと顔や頭の変形をきたすことがあります。二歳を過ぎても斜頸が治らないようなら、手術をして胸鎖乳突筋のツッパリを取り除く必要があります。
2011年11月28日
頸椎のおもな病気 つづき
◎頸椎捻挫
追突事故や転倒による頭部打撲などにより頚椎に外力が加わり頸部痛を生じたものが頸椎捻挫で、そのうち特に追突事故による頸椎の過伸展によるものはムチ打ち損傷と呼ばれます。軽い場合には首の筋肉や靭帯、椎間関節の軽度の損傷が疑われますが、重症のものでは神経根や脊髄の部分損傷が疑われるものも含まれます。神経根や脊髄が傷害されると、頸部痛ばかりでなくてや指の痛みやしびれ、筋力低下がみられます。脊髄が傷害された場合にはMRIにより診断されますが、その他のタイプではレントゲン検査やMRIで通常異常はみられません。
また頸部の交感神経が傷害されるとめまいや耳鳴り、目がかすむなどの症状が現れます。受傷直後は頸部の比較的安静を保ちますが、頸椎カラーの装着は短期間のみとします。長い期間頸椎カラーを使い続けると首周りの筋肉が落ち、よけいに治りが悪くなる場合もあります。
首の靭帯が交通事故などの外力により伸ばされて捻挫し、当然頸椎も前後などに少しずれた形となります。そのズレを上手に矯正することにより、受傷する前の頸椎のバランスに近く戻せれば戻せるほど後遺症も出なく軽快するでしょう。
◎寝違え
寝違えは睡眠中に生じた頸椎捻挫と考えられますが、睡眠中によっぽど寝ぞうが悪いというならばその影響でしょうが、睡眠中に交通事故並みの外力が加わるということは無いので、これこそ、ふだんからの体のバランスが悪く、肩周りや、首周りの筋肉が硬くなりひっぱられていっぱいいっぱいのところで睡眠中肩やくびを冷やしたり少し悪い寝ぞうが引きがねとなって寝違えが起こります。
ほとんどの場合が肩や、くびの筋肉の緊張により胸椎や頸椎が筋肉にひっぱられてズレそれによる痛みがほとんどです。
治療では、くび、肩周りの筋肉をやさしくほぐし、筋肉にひっぱっられてずれていた骨を矯正してあげるだけでほとんどの場合改善します。それだけではなかなか改善しない場合や、寝違いが一週間以上続く場合などが腰からのバランスの影響が大きくかかわっていますので、骨盤のバランスがおかしくなっている場合が多くなります。骨盤のバランスを見抜き、上手に矯正できれば、くび肩の痛みも改善しやすくなるでしょう。
2011年11月27日
頸椎のおもな病気 つづき
◎頸椎椎間板ヘルニア
頸椎の椎間板組織が後方の靭帯(後縦靭帯)を部分的または完全に破って脱出し、脊髄や神経根を圧迫して、首や上肢の疼痛やしびれ、麻痺などの脊髄症状や神経根症状が出たものを頸椎椎間板ヘルニアといいます。中年以降に多く見られますが、頚椎症性脊髄症や頸椎症性神経根症と異なり、二十代や三十代の若い人にもしばしばみられます。
症状としては頸椎症性脊髄症や頸椎症性神経根症と同様で、くびや肩、腕や手の痛みやしびれ、筋力低下や知覚鈍まがみられます。進行すると字を書くことや箸、ボタンはめなどの手の運動障害や歩行障害といった脊髄症状がみられます。発症は頸椎症にくらべると急激で、痛みもより強いことが多いです。
診断はMIRによって、ヘルニアの突出により神経が圧迫されているようすが観察され、ときに脊髄の中の変化もとらえることができます。しかしMRIでは症状と関係のない椎間板の突出が高頻度に見られ、診断上注意されるところです。
椎間板の突出があるからといって症状がない場合もあるということです、逆に言えば症状の無い人の頸椎のMRIをとっても高頻度で椎間板の突出があるということになります。よほどヘルニアが突出していての神経的な痛みが生じている場合は頸椎椎間板ヘルニアとなりますが、突出が少なかったりする場合は、頸椎の捻れによる(骨のバランスによる)神経根障害も多く隠れているのかもしれません。
治療は頚椎症性神経根症と同様に保存的治療が行われ、くびや上肢の痛みを主訴としている神経根症の場合には、多くは保存的治療のみで軽快します。頸椎などにかかわる筋肉の緊張をとり、頚椎のねじれやズレなどを優しく矯正していくだけでも多くの場合軽快します。
しかし、痛みが長期にわたり持続し、生活や仕事の大きな支障になっている場合や手の運動障害や歩行障害などの脊髄症状がみられる場合には、手術療法がおこなわれることもあります。手術は首の前から椎間板ヘルニアを取り出し、その部分の背骨を固定する方法が一般的です。
2011年11月26日
頸椎のおもな病気 つづき
◎頸椎症性神経根症
背骨の加齢的変化により、背骨の辺縁の骨の突出(骨棘)ができたり、背骨の関節が肥大したり、椎間板が変性し突出したりして、神経根が圧迫されて神経根症状をきたしたものを頸椎症性神経根症といいます。中年以降の人にしばしばみられます。神経根は脊髄から分岐した神経の枝で、頸椎では左右八対の神経根が七つの頸椎の左右から各分岐します。圧迫される神経根の高さにより痛みやしびれ、腕や手の筋力低下の部位が異なります。
症状は頸部痛はほとんどでみられ、肩甲骨周囲、肩から腕に放散する痛みがみられます。腕から手にかけての痛みやしびれはふつう左右どちらかいっぽうに現れます。首を後ろに反らすと痛みが強くなることが多く、首を後側方にそらし頭部に圧迫を加えると肩から腕にかけて痛みが放散する(スパーリングテスト)場合には頸椎症性神経根症が疑われます。
治療としては、頸椎の筋肉の過緊張と、それに伴う頸椎の捻れや、前後のずれなどをやさしくほぐし矯正をしていきます。それ以外にも、枕をらくな高さに調整したりすることも大事になってきます。多くはこれらの方法で軽快しますが、痛みが長期間続き、生活や仕事の支障になっているばあには、背骨を固定するなどの手術療法がおこなわれます。
2011年11月24日
頸椎のおもな病気 つづき
◎頸椎症性脊髄症
頚椎の中にある脊髄を入れている管を脊柱管といいますが、もともと脊柱管が細い人に加齢性変化である頸椎症が生じると、脊髄が圧迫されて脊髄のまひ症状があらわれます。これが頸椎性脊髄症です。壮年から高齢者に多く見られますが、若い人にも見られるときもあります。
外傷による脊髄まひを除くと日本では脊髄まひの原因で最も頻度が多いのが頸椎症性脊髄症です。
はじめはくび、肩の痛み、手や指の痺れが見られ、しだいにての細かい運動ができにくくなります。字が書きにくくなったり、箸が使いにくくなります。進行すると歩行障害や排尿障害を伴います。上肢、下肢、体幹の知覚が低下し、触覚や痛覚が低下し、深部腱反射が亢進します。
診断はMRIが重要で、椎間板や靭帯、背骨により脊髄が圧迫されている様子がわかります。
治療では首周りの筋肉や頸椎の動きを少しずつつけるような治療と、冷やすと症状が強く出やすい場合もありますので、日常生活では首周りを冷やさないように気おつけましょう。
脊髄症が進行し上肢の運動障害や歩行障害などの日常生活に大きな支障をきたす場合には手術がおこなわれます。頸椎の後方から脊柱管を拡大したり、脊髄を圧迫している背骨や靭帯を切除して、脊髄の圧迫が取れるような手術がおこなわれます。
2011年11月21日
頸椎のおもな病気
◎変形性頸椎症
背骨の加齢的変化により、背骨の辺縁の骨の突出(骨棘)ができたり、背骨の関節が肥大したり、椎間板が変性し突出したりして、さまざまな変形が生じます。この背骨の変形を伴った変化が頚椎に生じ、首、肩、肩甲骨周囲の痛みを伴った場合が変形性頸椎症です。このようなレントゲン写真で見られる背骨の変形は中年以降の人にはごく普通に見られるものであり、通常は病的な意味がないことが多いのです。あくまで頸部痛などの症状を伴った場合が治療の対象とされます。
中年以降の人に多くみられます。症状としてはくび、肩、肩甲骨周囲の痛みが生じます。首を後ろにそらすと首から肩にかけて痛みが生じ、頸椎の動きが制限されることがあります。
頸椎の捻れやゆがみによって神経的な圧迫や、筋肉の過緊張が起こり症状が現れやすいので、首まわりの筋肉の硬さと頸椎の歪みをしっかり触診し筋肉はほぐし、頸椎はやさしく矯正するだけでも軽度の症状は消失しやすいでしょう
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2011年11月20日
足のおもな障害 つづき
◎中足骨疲労骨折
スポーツ活動や足部に負担の加わる作業などを毎日激しくおこなっている人では、足部の中央にある中足骨という骨に疲労骨折がおこることがあります。疲労骨折は第二、三中足骨似よく見られる現象です。
治療では運動や作業の軽減が第一で、通常はこれだけで治癒します。病気が進んで完全な骨折になってしまった場合には手術による治療がおこなわれることもあります。
◎強直母指
足の親指(母指)の付け根の関節の動きが悪いために、歩行の際に母指基底部に痛みが生じる病気です。まれに先天的な要因のために若年者に発生することもありますが、多くは中高齢者で加齢による関節の変化が原因となって生じます。特殊な靴の使用や痛み止めなどがおこなわれます。
◎種子骨障害
足の親指の付け根の足の裏側には腱のすべりを滑らかにするために種子骨と呼ばれる小さな骨が二個あります。この骨の障害が原因で、母指基部の足底側に痛みが生じたものを種子骨障害と呼びます。この障害は怪我、マラソンなどのスポーツ活動によって起こることが多いのですが、中には原因不明の種子骨内部の細胞の障害(壊死)によるものもあります。
2011年11月19日
足のおもな障害 つづき
◎足部に生じる骨端症
骨端症は成長期にみられる骨の障害で、骨のはしにあり骨の成長をつかさどる部分に変化がおこって痛みを生じる病気の総称です。足部では踵の骨、足部中央の舟状骨、足の指の付け根にあたる第二あるいは第三中足骨の先端に生じることがあります。このうち舟状骨、中足骨に生じる骨端症は発見者の名前からそれぞれ第一、第二ケーラー病と呼ばれます。
踵部骨端症は10歳前後の学童にみられる疾患です。かかとの痛みがおもな症状で、診断にはレントゲン検査がおこなわれます。基本的に経過が良好な病気で、痛みがひどければスポーツ活動の制限などで経過が見られますが、成長が止まるころまでに症状が消えることがほとんどです。
第一ケーラー病は五、六歳ごろに発生することが多く、歩いたり運動した際の足の内側の痛みがおもな症状で、レントゲン検査により診断されます。たいていの場合は経過は良好で、軽度の運動を避けるようにすることで成長の終了とともに問題なく治癒します。
第二ケーラー病は10歳前後の女児におこることが多い病気で、歩行やつま先立ちしたときの足の前部の痛みが症状です。前二つの疾患と少し違い、骨の変形が残ったまま成長が終了してしまうことがあり、この場合には後々痛みを引きずる恐れもありますので、このころにしっかりした治療が必要となってきます。
2011年11月17日
足のおもな障害 つづき
◎足根管症候群
足の裏(足底)の感覚を伝える神経(後脛骨神経)は足首のところで内くるぶし(内果)の後ろを通りますが、神経の通路はこの部分でもともとかなり狭いため、何かのきっかけで神経がこの部分で圧迫され、足底の痛み、シビレ、触った感じ(知覚)の異常を引き起こすことがあります。このような状態を足根管症候群と呼びます。
◎モートン病
三番目と四番目の足の指の痛みを症状とする病気で、第三、四足指への神経の障害が原因です。中年女性に多く、きつい靴、ハイヒールを履くことで症状が強くなる傾向があります。
治療としてまず踵の低い、先が広くゆったりした靴を履くようにします。足底板を使ったり、中足骨のずれによる神経の圧迫が原因のことも多くありますので中足骨のずれをみて適正な矯正を何度か繰り返すことと、歩き方の癖なども直すようにすると良いでしょう。
2011年11月16日
足のおもな障害 つづき
◎足背部滑液包炎
足背にはれが生じ、触れると中に液体がたまっているように感じられる場合には滑液包炎の可能性があります。滑液包炎は足部の皮膚のすぐ下にある滑液包と呼ばれる組織に炎症が起こるために生じるもので、ほとんどの場合、内部には血液の混じった浸出液がたまっています。押して痛みがある場合、痛みがそれほどない場合のいずれもあります。
時間の経過とともに自然になくなることがほとんどです。
◎第五中足骨骨折
足部を強く内側にひねった場合、外くるぶしのした、足部の一番外側にある第五中足骨と呼ばれる骨の、いちばんうしろの部分が骨折を起こすことがあります。けがのしかたが足首の捻挫と同じなので、足関節の捻挫と間違えられることがありますが、押していちばん痛みのある部位(圧痛点)を丁寧にさぐればわかります。骨折が疑われたときはレントゲン写真により骨折の有無と骨折部のずれの程度を診ることができます。たいていの場合ギプス固定で治りますが、骨折部が大きくずれている場合などは手術療法がおこなわれることもあります。
2011年11月14日
足のおもな障害 つづき
◎踵骨骨棘、足底腱膜炎
いずれも足の裏、特に踵の部分に痛みを生じる病気です。足底腱膜は足の裏にある丈夫なすじで踵の骨に付着していますが、何かのきっかけでこの腱膜自身あるいは踵骨への付着部に炎症がおこることがあり、歩行や運動のときにくるぶしや足の裏の痛みが生じるようになります。長時間歩く人や運動選手などでよくおこりますが、ごく普通の生活をしている人でも時々生じます。
治療としては、運動量や歩行量を減らす、足に良くあったクッション性の高い靴を履く、足底から下腿後面にかけてのストレッチング、足底板の使用や、シップなどの使用がおこなわれます。
◎踵部滑液包炎
かかとの骨の後ろあるいはアキレス腱の後ろの部分に痛みが生じる疾患で、痛みは起床後に歩き始めたとき、あるいは長時間歩いたときなどにあらわれます。かたい靴や寝具などによる後方からの踵の圧迫が原因の事もありますが、特別な原因がなくても生じることもあります。
治療としては、局部に加わる刺激や圧迫をできるだけ取り除くことが大事です。シップや軟膏も用いられますが、症状がなかなか取れない場合には足底板などの私用が良いでしょう。
2011年11月13日
足のおもな障害 つづき
◎爪周囲炎と陥入爪(そうしゅういえんとかんにゅうそう)
爪周囲炎(爪囲炎とも)は爪の周囲に細菌感染が起こったもの、陥入爪は巻爪とも呼ばれ爪が横方向に湾曲し、爪の左右のふちが指の組織に食い込んだ状態をいいます。
爪周囲炎では爪の周囲にはれ、痛み、発赤が生じ、指で押したり靴で圧迫されると強く痛みます。治療は患部の清潔保持と消毒、抗生物質の服用で、炎症を悪化させないことです。
陥入爪がある人では繰り返して爪部に対する体重の負荷、靴による圧迫が原因で生じたと考えられるので、爪周囲炎を繰り返す場合にはかかとが低く、なるべく先のゆったりした靴を選んで履くようにし、爪部の清潔保持につとめます。また、爪は短く切り過ぎないようにします。このようにしても爪周囲炎を繰り返す場合には、陥入爪を矯正する手術がおこなわれることもあります。陥入爪があっても爪周囲炎を伴わない場合には特に治療の必要がありません。ただし爪の周囲の清潔保持につとめ、また靴の選択に注意してなるべく変形が進まないようにします。
◎うおのめ、たこ(鶏眼)
皮膚科の疾患ですが、この疾患で整形外科を受診される人も少なくありません。どちらも皮膚角質の異常な増殖が原因で、皮膚の一部が異常にかたくなっているため、体重がかかった際に痛みを覚えるようになります。
うおのめなどは、液体窒素などでうおのめ自体を低温やけどさせ、やけどをして皮膚が一枚ずつはがれていくような治療法がおこなわれます。うおのめは細菌感染が原因なので、深部までとりきれないと同じところに再発がおこります。
たこなどは、その人の皮膚の体質などや、歩き方、はいている靴などや、骨盤のバランスが原因で足底に無理な負担がかかって起こりやすくなりますから、そういったところを改善していくことが再発防止にもなるでしょう。
2011年11月12日
足のおもな障害 つづき
◎通風性関節炎
足の親指の付け根は痛風発作が最もよくおこる場所です。男性で原因がはっきりしないのにこの部位に急に痛みと発赤が生じた場合には痛風発作を考える必要があります。ふだんの血液検査で尿酸値が高めの人でなおさら痛風の可能性が高まります。痛風は血液中の尿酸という物質が多すぎるために起こる病気です。血液中に溶けきれない尿酸が関節の中に徐々に蓄積されていき、この蓄えられた尿酸が関節炎を引き起こしています。尿酸の蓄積は徐々に進みますが関節炎は急に起こることが特徴で、全く思い当たる原因がないこともあれば軽く母指をひねったなど些細なきっかけによって炎症が生じることもあります。なお痛風発作が女性に起こることは極めてまれです。
症状は母指基底部の強い痛みで、はれや発赤を伴い細菌感染による蜂か識炎と症状が似ています。痛風発作は鎮痛薬の服用などで症状は数日で軽快しますが、痛風発作をおこした人は再発予防のため血液中の尿酸の濃度をコントロールする薬を継続的に服用する必要があります。
◎糖尿病性足部障害
糖尿病の患者では足部に潰瘍ができることがあります。これは、糖尿病によって足部の神経や血管が冒されるためです。もともと足部の血流が低下しているため潰瘍は一度できるときわめて治りにくく、範囲が広がる傾向があり、またしばしば細菌感染を伴います。糖尿病による神経症ががある場合には痛みの感覚がにぶくなっているため、創部に知らないうちに体重をかけていることが多く、これも潰瘍が治りにくい原因の一つです。こういった特殊な問題があるので、糖尿病による足部潰瘍は専門の医師による治療が必要です。潰瘍は糖尿病の管理が不良の場合に生じることが多いので、予防が大変重要です。最近では、糖尿病になったら早めのインシュリン投与をすることにより糖尿病が完治することもわかってきました、糖尿病と診断されたら、早めの治療を行いましょう。
2011年11月10日
足のおもな障害
◎外反母趾
足の親指の付け根が変形して親指の付け根が内側に突き出すようになり、親指の先は逆に外を向くようになった状態をいいます。最初の変形は親指に起こりますが、変形が進むと他の指にも変形が生じるようになります。この疾患は女性に多く、また遺伝的な要因も関与しているといわれています。
症状は、おもに突出した親指の付け根内側の痛みです。これは変形によってここが靴で強く圧迫されるようになるためです。ハイヒールなどでつま先を締めつけるような履物や、ペタ足歩きなどが外反母趾の発生を促すことが知られています。ひとたび変形が生じるとなかなか元には戻りにくくなりますから、変形してきたら、歩き方や、指の運動、足底筋などの強化をすることにより外反母趾を治していくことが大切です。
◎偏平足障害
土踏まずの形成が悪い(土踏まずが低い)と歩行に伴う衝撃を足がうまく受け止めることができず、歩行に伴って足底や足関節内側に痛みが生じることがあります。これを偏平足といいます。
偏平足障害に対しては、歩く量の制限、靴の工夫、足底板の使用などによる治療が行われます。まれに、先天性の骨の形状の異常が原因である場合には手術がおこなわれることもあります。なお外見上のアーチの形成がはっきりするのは四歳以降ですので、これより小さい子どもでは偏平足の傾向があってもそれほど心配は要りません。
2011年11月 9日
足関節部のおもな病気 つづき
◎足関節部のその他の病気
青少年期にはスポーツ活動の機会が多いこともあり、特有な足関節の障害が生じることがあります。有痛性外脛骨、有痛性三角骨、距骨後突起障害はいずれも生まれつき骨の形状に軽度の異常がある場合で、足関節に過度の負担が加わったために痛みが生じるようになった状態をいいます。
足関節の外来るぶし(外果)の後方にはひ骨筋腱と呼ばれる腱がありますが、この腱がスポーツ動作などの際に繰り返して脱臼するようになることがあり、腓骨筋腱脱臼と呼ばれます。離断性骨軟骨炎は足関節の下部を形成する距骨という骨の関節面の一部がかけてしまう原因不明の病気です。いずれの病気も症状が強い場合には手術がおこなわれます。
特別な原因がないのに足関節に急に強い痛みが生じてきた場合には痛風発作が疑われます。痛風発作はほとんどが男性に起こります。また足関節部には関節リウマチ、腫瘍、感染などでも障害が生じることがあります。
2011年11月 7日
足関節部のおもな病気 つづき
◎アキレス腱断裂
アキレス腱はふくらはぎの筋肉とくるぶしの骨をつなぐ太く丈夫な腱ですが、ジャンプや急に走り出そうとしたときなどこれが突然切れてしまうことがあります。切れた瞬間には後ろからけられたとかうしろからぼーるがあたったような感じがしますが、たいていの場合、痛みはそれほど強くありません。アキレス腱が切れても歩くことはなんとかできますが、つま先立ちはできなくなります。
治療法には手術をして腱をつなぐ方法、ギプスなどで固定して腱の自然な修復をまつ方法がありますが、どちらの治療法にもそれぞれ長所と短所がありますが、最近ではギプス固定が多くなってきているようです。手術療法もギプス固定も予後はあまり変わらなくなってきているからでしょう。
◎変形性足関節症
変形性関節症は関節の軟骨がすり減って関節の痛みや動きの制限が生じる疾患です。高齢者に多く、膝関節に生じることが多い病気ですが、足関節の場合、この疾患がおこることは幸いあまり多くはありません。しかし以前に足関節の骨折や繰り返しの捻挫を経験している場合には足関節にも変形性関節症が起こることがあります。
治療は軽症であれば足底板などの装具を試すことから始まりますが、進行した症状であれば手術がおこなわれることもあるでしょう。
2011年11月 6日
足関節部のおもな病気 つづき
◎足関節部の骨折
足関節、特に内くるぶし(内果)は骨折が良くおこる部位でもあります。足関節の骨折は転倒、スポーツ外傷、交通事故などで捻挫とよく似た状況で起こります。
足関節の骨折は関節という骨と骨が接して擦れ合うように動く部分におこる骨折であるため、骨折部をきちんと元通りの状態にもどさないとのちに関節の痛みや動きの制限といった障害が起こる可能性があります。このため足関節部の骨折は手術が必要なことが多くなり、骨折部をずれないようにきちんと整復した上で手術用のスクリューなどで固定することになります。
◎足関節外果部滑液包炎
足関節の外くるぶし(外果)の付近に腫れが生じ、触れると中に液がたまっているように感じられた場合、滑液包炎の可能性があります。滑液包炎は足関節部の皮膚のすぐしたにある滑液包と呼ばれる組織の炎症で、たいていの場合、はれの内部には血液の混じった滲出液がたまっています。押して痛む場合も痛みがほとんどない場合もあります。
時間の経過とともに自然に軽快することが多い病気です。
2011年11月 5日
足関節部のおもな病気
◎足関節靭帯損傷(捻挫)
足関節の捻挫は日常よくおこりやすい外傷で、階段や段差などで足首をくじいた場合に起こります。最も多いタイプは足関節を強く内返(内反)したために外くるぶし(外果)付近の靭帯の損傷を生じるタイプ(足関節外側靭帯損傷)で、足関節部の捻挫の八割以上がこのタイプです。外果の周囲には三本のおもな靭帯がありますが、内反捻挫で最も多いのは外くるぶしから斜め下にはしる前距ひ靭帯の損傷です。
足関節を強くひねったあとで強い痛みが生じた場合には、まず捻挫を疑います。足関節は骨折のおこりやすい場所でもありますが、痛みのある場所を丁寧に探せば、たいていの場合靭帯の損傷と骨折を区別することが可能です。ただし捻挫と症状が良く似た骨折もありますので、そういった場合にはレントゲン検査が必要でしょう。
足関節の捻挫ははじめの治療が不適切であったり、捻挫を繰り返している場合、関節が慢性的に不安定な状態となることがあります。このような状態になると、足関節の関節軟骨が徐々に傷ついて、長期的に足関節の痛みや動きの制限が生じる可能性があります。このためこのような場合には手術で靭帯の再建をすることがあります。
治療としては、怪我をした直後は足関節を動かないように固定し、患部を冷却するとともに圧迫を加えて腫れがなるべく起こらないようにします。患部を心臓より高い位置に保っておけば腫れを予防するうえでさらに効果的です。
2011年11月 2日