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子供の病気


○せき

 咽頭炎、気管支炎などの呼吸器感染症のほかに、気道異物、ぜんそくなどがあります。感染症によるせきは、小児では咳止めよりも、去たん薬が適しています。


○喘息

 生まれたときからゼイゼイした呼吸をしているのを先天性喘鳴といいます。哺乳が少ない場合には気おつけますが、一切を過ぎるとだいぶ軽快します。かぜのたびにゼイゼイするのは、哺乳では気管支が細いためですが、アレルギーの家族歴がある場合には、ぜんそくの場合があります。治療法はさまざまで、継続的な診察が必要になってきます。また、タバコの煙は有害です。ぜんそくを発症させないためにも家庭内喫煙はしないようにしましょう。

○けいれん

 乳幼児期は最もけいれん発作が多い時期です。熱性けいれんが最も多く、原因はさまざまです。一瞬意識がないようにみえるだけの発作もあれば、全身をかたくする発作もあります。けいれんだと思ったら、あわてないで寝かせて、顔を横に向けてください。多くのけいれんは二分以内でおさまりますが、ときに二十分以上のことがあります。五分以上続くようなら、おさまっても、脳炎などの病気のことがありますので病院に行ったほうがよいでしょう。

○意識障害
 
 突然子供の意識がなくなったら、まず周囲の人を大声で呼びます。子おもでは呼吸から止まることが多いので、まず呼吸をしているか確認します。呼吸をしていないように見えたら、口と鼻を大人の口でおおって人工呼吸をします。首に手を当てて、脈拍を確認します。その間に、他の人は救急車に連絡します。救急車がくるまで、人工呼吸と心臓マッサージを続けます。呼吸をしていれば、その必要はなく、よく観察するようにします。

2012年6月30日

子供の病気


○便秘

 排便には個人差があります。二日に一回でも元気で問題がなければ、便秘とは言いません。排便がなくて腹部がはっていたり、不快感があったり、排便時に肛門が切れたりするようなら、治療の必要があるでしょう。

 乳児では頑固な便秘は腸の病気であることもあります。離乳食開始後に便秘になるのは、離乳食が早すぎることが原因の事もあります。乳児以降の場合には、食事習慣を見直すことで改善することがあります。体の動きが不自由なために便秘になることもあります。


○腹痛

 原因は年齢によってもさまざまです。胃腸炎、虫垂炎、腸重積、便秘などの消化管疾患から心因性までさまざまです。小児の腹痛は緊急を要する疾患であることも多いために、鎮痛薬は使用せず、原因を探ることが優先します。子供の虫垂炎、腸重積は典型的な症状を示さないで、いったん症状がおさまることがあるので、胃腸炎といわれて帰宅した場合も注意が必要です。繰り返し腹痛を訴える幼児期以降には、それ以外の症状がなければ、ストレスによるものもあり、さするだけで消失することもあります。学童期には潰瘍性大腸炎、胃潰瘍などの病気もあるので受診が必要です。


○おなかがふくらんでいる

 これは乳幼児期に多い訴えです。なんでもないこともありますが、腹腔内に主要があることもあります。


○発疹

 小児期には発熱を伴う発疹性感染症が多数あります。また、薬疹、湿疹、アトピー性皮膚炎など原因もさまざまです。発熱を伴うときには診察が必要です。元気で発疹だけのときは、様子を見て大丈夫でしょう。繰り返すときには、アレルギーの事もあります。

2012年6月28日

子供の病気


○嘔吐

 乳幼児は胃が垂直位だったり、胃と食道の境目の括約筋がゆるいことなどから、嘔吐しやすいのが特徴です。

 嘔吐の原因はさまざまです。慢性の嘔吐は、乳児では肥厚性幽門狭窄、胃軸捻転症などの消化管の異常、水頭症などの神経系の異常などが考えられます。急性の嘔吐は胃腸炎がほとんどですが、尿路感染症、髄膜炎、代謝疾患などのこともあります。高熱に伴って嘔吐がある場合は、胃腸炎以外の場合もあるので受診したほうがよいでしょう。繰り返す嘔吐もあります、原因によって対応法が異なってきます。

 胃腸炎による嘔吐・・・まず、嘔吐が落ち着くまで、哺乳や食事はやめます。やめている間は水分だけを少量ずつ、まめにあげます。水分は、水、さ湯、イオン飲料、麦茶などがあり、嘔吐が頻回のときには水分だけではなく、ナトリウムなどの電解質もなくなるために、その補給が必要です。

 頻回のとき、二日以上のときにはイオン飲料が良いでしょう。スポーツドリンクよりも、薬局で市販されている子供用のイオン飲料が補充すべき電解質を多く含み適切です。幼児では暖かい水分よりも冷やしたほうが飲みやすいこともあり、好みに合わせてあげましょう。哺乳、食事の再開は嘔吐がおさまり、飲んだ水分を半日吐かないことを確かめてからはじめます。嘔吐が続くと脱水になり、点滴が必要な場合もあります。


○下痢
 
 乳幼児では嘔吐と並行して起きることが多く、年長児では下痢だけの事もあります。慢性の下痢は、乳幼児ならアレルギーや代謝の病気、乳糖不耐症なども含まれます。学童期以降は、過敏性腸症候群という病態もあります。年齢によってさまざまな原因でおこります。

 胃腸炎による急性の下痢・・・母乳ならそのまま哺乳しても大丈夫ですが、下痢が水様性で、頻回のときには一日哺乳を休むと回復が早いことがあります。食事をとめるのは二日間までにして、哺乳や食事の止めを長くするとかえって回復が遅れます。おかゆが食べられる年齢なら、食事再開は重湯、おかゆからで、ミルクはあとからです。下痢止めの薬は、病状を把握できているときには処方されますが、乳幼児の場合には医師からの処方で服用しましょう。

2012年6月27日

子供の病気


○発熱

 子供の受診の訴えで最も多いのが発熱です。救急受診でも一番多い訴えです。わきの下で体温を測って37.5度以上が発熱です。それ以下では心配なことはほとんどありません。平熱が低い場合には、平熱よりも一度以上高ければ発熱と考えます。

 乳児は体温調節がうまくできないので、高温環境にいると体温が上昇し、低温環境にいると低体温になります。自動車内での放置は危険です。春、秋でも直射日光の照る車内は60度にも達し、車内放置は子供をしに追いやります。

 解熱薬の使い方・・・病気による発熱は、病気やその回復のサインとして重要です。むやみに解熱薬を使うのはいけません。一歳未満は使わないほうが安全です。病気の症状が把握されてから、医師の指示の元で解熱薬を使用します。平熱まで下げようとするのは危険なことがあり、一度程度下げるつもりで使用します。一回使用して一度以上も下がりすぎた、または平熱よりも下がったなどの場合には、次回はそれより量を少なくします。

 解熱薬は一度使用したら、六時間以上空けるのが原則です。子供には危険な解熱薬もあります。

 冷やす・・・わきの下、首などを冷やす程度にします。氷枕は気分がよければしてもかまいませんが、たいした効果は期待できません。額に貼るタイプのものも同様です。熱があっても水分を十分取れていれば無理に熱を下げようとする必要はありません。

 高熱だけの時には、まず水分の補給が第一です。ただし高熱時には、胃の働きも悪くなっているために、胃の中にたまりやすいミルクやヨーグルトなどは何時間もたってから嘔吐することがあります。リンゴジュースとかスポーツドリンクのように吸収が早くて胃を通過しやすいものがよいでしょう。乳幼児向きのイオン飲料もありますが、本人が飲める水分なら何でも良いでしょう。

2012年6月25日

子供の病気


◎おもな症状と手当て

○なんとなく元気がない
 よく観察している親が、なんとなくふだんと違うといったら、大変重要な意味をもつことがあります。直感をみがくと同時に、そう感じたら、受診するようにしましょう。

○顔色がおかしい
 暗紫色・・・チアノーゼといいます。くちびる、爪などにあらわれますが、顔全体になることもあります。急になった場合には呼吸か心臓に重大な問題が生じたか、あるいは、泣き入りひきつけのように安全な状態かどちらかです。

 蒼白・・・急に蒼白になったら、原因はいろいろです。低血糖やてんかん発作も、泣き入りひきつけでも蒼白型があります。くり返すとき、反応がにぶいなどのほかの症状を伴うときには医師の判断が必要でしょう。

 黄疸・・・多くは新生児期、乳幼児早期のうったえです。心配のない母乳性黄疸と病気の場合があります。乳幼児期以降に目の白い部分が黄色い場合には、肝臓疾患の可能性が考えられます。

○哺乳不良

 慢性の哺乳不良は、心臓疾患、呼吸器疾患、神経疾患などの病気のほかに、さまざまな原因があり、小児科医の判断が必要です。急性の哺乳不良は、感染症が最も多い原因です。呼吸器感染、胃腸炎、尿路感染などがあります。

 発熱がなくても、哺乳が少ない状態が2〜3日続くと、脱水におちいることがあります。ふだん飲む量の三分の二以下に減っていれば受診したほうがよいでしょう。熱やせきが原因の哺乳不良では、それらの治療が先になりますが、時には輸液をする場合も有ります。

2012年6月24日

子供の病気


◎子供の病気の特徴

○大人とは違う

 子供の病気は大人とはさまざまな点で違います。日ごろから子供の状態、平熱、顔色などをよく観察しておくことが大切です。いつもと違うという親の直感が、重大な病気を発見するきっかけになることもあります。

1・問題がわかりにくい
 子供の病気はうったえがないか、わかりくいのが特徴です。何処が痛いのか痛くないのか、乳幼児ではわからないことが多くあります。それだけに、親の直感をはたらかすためにも、日ごろの観察、見守りがとても大事です。

2・発症や進行が急であることが多い
 ついさっきまで元気だったのにということがしばしばあります。医師の診察を受けて比較的元気に帰宅した直後に急変することもあります。専門医でも予測しにくい急変が多いのが小児の特徴です。

3・全身の問題になることが多い
 防御機能が未熟なため、感染症が重症化、全身化することがおとなよりも多くあります。

4・感染症が多い
 子供に特有の感染症も多数あります。感染症にかかりながら免疫を獲得していくために、どうしても一生で最も感染症が多い時期です。

5・年齢によって病気が異なる
 1〜15歳を小児とすると、各年齢または年齢層で、かかりやすい病気が違います。

6・病気の種類が多い
 生まれつきの病気も含めて、大人はかからない病気も、大人と同じ病気もあります。病気の種類が多いのが特徴です。

7・心の問題はからだで表現される
 乳幼児はことばで自分の問題を表現することが苦手です。心の問題は、必ずからだで表現されます。これは学童期以降も同様です。子供には大人と同様に、あるいは大人以上に心の問題がたくさんあります。それを認識することが解決の第一歩です。

2012年6月23日

医療機器によるおもな検査


○眼底検査

 眼底は網膜、動脈、静脈、毛細血管などで構成されますが、全身の血管の変化が反映される部位で、しかも眼底鏡や眼底カメラで直接観察できます。このため、高血圧や動脈硬化、糖尿病、あるいは脳腫瘍などの病態について、重要な情報を与えてくれます。

 糖尿病では早期発見の変化が網膜にもあらわれますが、蛍光色素を静脈注射して網膜の血管を映し出す蛍光眼底検査が非常に有効です。

 きちんと検査するためには瞳孔を開かせる必要があり、検査後しばらくの間、まぶしかったり、時には充血したり、近くの文字が読めないという不都合が見られることがあります。また、緑内障の場合は悪化させる恐れがあるため、事前に医師と相談するようにしましょう。

○生化学自動検査システム

 日常検査で実地される肝機能検査、腎機能検査、総タンパク、アルブミン、電解質、コレステロール、尿酸などは全自動の生化学検査機器を使用して測定されます。採血後、血液を凝固させたうえ、遠心器で血球部分と血清を分離し、全自動の機械にのせるだけで,一定時間後に指示した項目の結果が示されます。

 また、赤血球や白血球などの血液学的検査、尿検査、免疫学的検査などでも、同様な自動機器が使用されています。計測時間も大幅に短縮さえ、診察予約時間の一時間前に採血をすれば、診断時には結果がそろうという検査が多くの病院で実施されています。

2012年6月18日

医療機器によるおもな検査


○呼吸機能・睡眠ポリグラフィー検査

 肺活量、残気量、一秒率などの呼吸機能を調べる検査で、鼻ばさみをしてマウスピースをくわえ、安静時の呼吸状態から思い切って吸気、呼気をおこないます。

 加齢とともに少しずつ肺活量は減少していきますが、病的なプロセスでこれが低下する場合を拘束性障害といい、肺線維症などで見られます。いっぽう、気管支喘息や慢性気管支炎では閉塞性障害といって、呼気の排出時間が長くなりますが、これを一秒間にどのくらい呼出できるか(一秒量、一秒率)で表現します。

 フローボリューム曲線から呼吸器の病気をある程度推察することができます。

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を診断するためには睡眠ポリグラフィーを使い、脳波(睡眠状態の確認)、眼球運動、胸郭や腹壁の呼吸運動、呼気、吸気の検知、あごや首の筋肉運動、手足の動き、パルスオキシメーター(血液の酸素濃度測定)などを、ポリグラフで同時に検査して解析します。

 通常は入院して一晩の睡眠中のデータをとり、解析します。

 SASと診断されたら、その原因に応じて減量、CPAP(持続性加圧呼吸補助装置)、マウスピースなどで改善をはかりますが、その程度を再度睡眠ポリグラフィーで検査して確認します。

2012年6月17日

医療機器によるおもな検査


○心電図検査

 心臓が収縮するとき、大きな電気信号が発生します。これを体表から記録するのが心電図検査で、通常は手足の四電極と胸壁の六電極を使って、十二個の誘導心電図を記録します。

 検査時には力を抜いて、安静状態で測定します。検査は短時間ですが、不整脈がある場合には長めに記録します。

 最近の心電計には自動解析機能がついていて、正常か異常か、診断結果も表示されますガ、それは主に参考程度で、しっかりとデータを見て診断されます。

 心電図では心房から発生するP波、心室から発生するQRST波がひとつのユニットとして繰り返され、不整脈があるときはこのユニットが分離したり(房室ブロック)、変形したり(QRSTの延長)、不規則にあらわれたり(期外収縮といわれる)します。発作性頻脈では突然脈拍が速くなります。

 心肥大ではR波やS波で高さが大きくなり、狭心症や心筋梗塞ではST部分が変動したり、Q波が深くなったりする異常がみられます。

 心電図検査前の運動やアルコールなどは禁物で、タバコやコーヒーなども、検査一時間前には控えるようにしましょう。

 短時間の検査では確認できない不整脈や狭心症の発作は、携帯型ホルター心電計を装着して通常の生活を送りながら二十四時間記録して解析します。

 手術中や重症の患者さんに対しては連続して心電図をモニターするのが通常の措置です。運動が刺激となって出現する異常は階段昇降試験やトレッドミル負荷試験で適度な運動をして異常の有無を検査します。

2012年6月16日

医療機器によるおもな検査


○内視鏡検査

 内視鏡検査は日本で大きく発展した検査です。最初は胃カメラと呼ばれたように、小さなカメラを胃空内に挿入して撮影しましたが、ファイバースコープの登場とともに小型化され、楽に検査ができるようになりました。スコープ挿入に伴う嘔吐を抑制するために、咽頭粘膜をスプレーで麻酔します。このため、検査後も一定時間は飲食を差し控える必要があります。(誤嚥の恐れあるため)。また、検査をようにするために鎮静剤を注射することもあります。

 従来はファイバーの末端につけたファインダーをのぞいて観察していましたが、先端にCCDカメラを装着して外部のモニターに映しながら検査できるようになったため、複数の術者どうしばかりでなく、被験者も内視鏡の画像を観察でき、検査と同時に説明することも出来ます。

 ファイバーは自由に角度を変えたり、反転することが可能で、見にくい部分を減らす工夫がされています。また、先端から出血や胃液を吸引したり、組織の生検(バイオプシー)が容易にできます。また、ポリープや小さながんなどでは、検査をしながら摘除することもあります。

 食道、胃、十二指腸や大腸ばかりでなく、膵管や胆道の造影にもつかわれます。気管支ファイバーでは気管支でみられる腫瘍病変や感染症の確認が可能です。

 皮膚に小さな穴を開け、内視鏡やメス、カンシを腹腔内や胸空内、あるいは皮下に挿入し、内視鏡で確認しながら、がんなどを切り取る内視鏡手術も患者さんの肉体的負担の少ない手術法になっています。

2012年6月14日

医療機器によるおもな検査


○超音波(エコー)検査

 体表にゼリーを塗ってプロープを当て、超音波を発生させ、臓器から反射してくる超音波をプロープでとらえて、解析するのが超音波(エコー)検査です。組織の性質、プロープからの距離の違いを画像化することができます。体に侵襲をくわえることなく、臓器の断面増を手軽に検査できるのが特徴です。人間ドックなどのスクリーニングとしても広く使われています。

 超音波検査は、骨に隠れた臓器、肺や胃、腸のようにガスや空気が存在する臓器ではきれいに検出できませんが、実質臓器ならば全身で検査可能で、測定部位にマッチしたプローブを使います。検査は全く痛みを伴わず、ゼリーやプローブを時には冷たく感じる程度ですみます。

 悪性腫瘍やのう胞、結石、血管種、脂肪肝などは、プローブを当てるだけですが、微小気体を静脈注射して、病変のコントラストを拡大したり、ドップラーエコー法を併用して、血流の情報も加えることができます。

 心臓の超音波検査では、肋骨の間からプローブを当て、心臓の壁の厚さ(心肥大、うっ血性心不全)、心臓壁の動き(心筋梗塞や心不全)、弁の異常(心臓弁膜症)など、リアルタイムで心臓の状態を観察することができます。また、ドップラーエコー法をもちいると、血流の逆流(大動脈弁閉鎖不全症など)や短絡(心室中隔欠損症)の存在、程度も容易に検査できます。

2012年6月13日

医療機器によるおもな検査


○シンチグラフィー(SPRCT/PET)検査

 放射性同位元素で標識した薬剤が特定の臓器に取り込まれると、ガンマ線を放出します。これをガンマカメラでスキャンした画像がシンチグラフィー検査です。PET(陽電子放射断層撮影装置)が登場して以降はSPECTと呼ばれています。

 骨転位、骨肉腫などが検査できる骨シンチグラフィー、がんや炎症組織に取り込まれやすいガドリニウムシンチグラフィー、脳の血流分布を見る脳シンチグラフィー、心筋の血流の不均等をみる心筋シンチグラフィー、肺梗塞の診断に使う肺シンチグラフィーなどがあります。

 PETでは陽電子を放出する核種を使います。陽電子は消滅するときに二個のガンマ線が180度の反対方向に放出されるため、これを検出して存在部位をわかりやすくします。

 いっぽう、がん細胞や脳、心筋細胞などは他の組織よりも代謝が活発です。陽電子を放出する核種18Fで標識したブドウ糖を投与すると、がん細胞の存在、心筋や脳の活動状態がわかります。陽電子を放出する核種の半減期は短いので、少量投与であれば人体への影響はありません。逆に、作成してから検査までの時間を短縮しなければならず、施設内にシンクロトロンなどの生成機器を設置する必要があります。全身を一度に調べられ、かなり小さながんでも発見できることから、がんの早期発見のための健診にも使われるようになっています。

○骨塩定量検査

 骨粗しょう症の診断で重要なのは、骨量が成人の平均値と比べてどのぐらい減っているか(骨がどのくらい弱くなっているか)をみることです。このために使用されるのが骨塩定量装置です。

 骨塩をもっとも正確に測定できるのが、腰椎や大腿骨、全身を測定できるDXA装置です。弱いエネルギーのX線を使うので被爆量はきわめて微量ですが、それでも妊娠中の人は避けたほうがいいでしょう。

 検査法は簡単で、検査台の上で横になるだけで、あとは機械がスキャンして骨量を解析し、若い人の平均値の何パーセント相当か、同年代の平均値の何パーセントかを示してくれます。

 全身の測定では、骨塩量ばかりでなく、全身や部位別の脂肪量、除脂肪量なども計算できるので、肥満ややせの判定、筋肉量の推定などにも有効に使えます。

 小型の簡便な検査としては、前腕のDXA装置やかかとの超音波装置もあり、検診やスクリーニングに使われますが、治療効果を見るには適しません。

2012年6月11日

医療機器によるおもな検査


○X線CT(コンピュータ断層撮影)検査

 X線管球とディテクターを円周上に配置して回転させ、全周で得られた情報をえるのがCTで、画像診断に革命的な進歩をもたらしました。

 通常のX線では画像が重なって映るので、骨や心臓などが重なると十分な情報が得られない欠点があるのに対して、X線CTでは断層像が得られるので、骨に邪魔されずに、あまり侵襲を加えずに人体の内部の情報を見ることができます。

 また、造影剤を使用することにより病変ごとのコントラストが増強され、単純CTでは得られない診断が可能となっています。頭部CTでは脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、脳動脈流、脳腫瘍などが診断可能となり、また、全身のCTでは悪性腫瘍をはじめとして、多くの病変がわかるようになってきました。

 さらに、最近ではヘリカルCT(マルチスライスCT)が普及しています。これは、人体に対してX線管球がらせん状に回転し、連続して撮影ができる装置です。これによりX線CTが本来、不得意だった立体画像を映し出すことが可能となりました。

○MRI(磁気共鳴画像法)検査

 X線CTとは異なり、X線被爆なしに体内の断層撮影、立体画像が得られるのがMRI検査です。強力な磁場に置かれた水素原子に高周波をあてることによって得られる微小な電磁波の変化を検知し、水素原子の分布、結合状態の指標として画像化します。

 撮影面を自由に設定できるので、人体の横断面や縦断面ばかりか、任意も断面でも画像が得られ、三次元の立体の画像の構築も容易にできます。また、電磁波は骨組織も通過するので、脳や脊髄、関節くうなどの映像にもすぐれています。

 撮影の条件を変えることで、いろいろな情報が得られます。造影剤を使用すると、よりコントラストのある画像になります。また、造影剤を使わずに血管の走行を映し出すMRI血管撮影(MRアンギオ)も可能です。強力な磁場の中に入るので、金属の装飾品はすべてはずし、体内にペースメーカーや動脈瘤のクリップなどがある場合には検査を受けることはできません。

2012年6月10日

妊娠中期・後期に起こる異常


○羊水過多症

 羊水が異常に多いため、お腹が妊娠週数にくらべてかなり大きくなり、母体は息苦しいなどの症状が出ます。胎児や胎盤の異状によることもありますが、原因が不明のことも半分くらいあります。早産、破水、妊娠中毒症などを起こしやすいので、入院して安静にしたほうが良いでしょう。超音波検査や場合によってはMRI検査などが胎児の異常を調べるために必要になります。お腹にチューブを入れて羊水を抜くこともおこなわれます。

○胎盤機能不全

 胎盤は胎児の成長や生命の維持のために必要な臓器ですので、胎盤の働きが悪くなると胎児の状態も悪化し危険な状態となってしまいます。妊娠中毒症、糖尿病、予定日を二週間以上過ぎた場合などでは、胎盤機能不全の可能性があります。いろいろな検査によって胎盤機能の状態を確認し、機能不全の徴候が見られたら、分娩誘発剤や帝王切開により胎児をとりだします。

 超音波検査は胎児の検査に欠かせないものですが、胎児の成長を見るばかりでなく、胎児の動き、羊水量、血流などを測ることによって胎児の成熟度や現在良い状態にあるかどうかも知ることができます。

 


医療機器によるおもな検査

○X線検査

 レントゲンによるX線の発見から一世紀以上が経過し、X線検査は日常的に最も利用されている画像検査法のひとつとして定着しています。

 X線の原理は、X線管球から発生するX線が人体組織を透過し、X線フィルムを感光させて画像化するもので、頭のてっぺんから足の先まで、骨、軟部組織を問わず、全身のあらゆる組織の検査に応用されています。

 最近ではX線フィルムを感光させる代わりに、多数のディテクターでX線を検知させ、それをコンピュータ処理して画像化するCRが普及しています。画像の濃淡、コントラストがディスプレー上で容易に変えられるため、一回の撮影で得られる情報が格段に増え、詳細な検討が可能となりました。

 定期健診などの胸部X線撮影では、正面像だけがとられるのが一般的ですが、心臓や横隔膜で肺の下方の部分が隠されてしまうため、医療現場では側面像をとることもかなり重要です。

 上部消化管(食道、胃、十二指腸)をみるには透視といって、x船を断続的に発生させてディスプレーで画像を確認しながら的確な画像を撮影します。空気と少量のバリュウムを使って、胃や大腸の粘膜の変化を映し出す二重造影の技術は日本人による発明で、早期胃がんの発見に大きく貢献しています。

2012年6月 9日

妊娠中期・後期に起こる異常


○多胎(ふたごなど)

 双子の確率は、自然では100人に一人くらいですが、最近では不妊治療のため最も多く、さらに三つ子以上も増えています。双子は、一卵性と二卵性があり、一卵性は一個の受精卵が二個に分かれて成長したもので、同性で顔つきも似ています。二卵性は同時に二個の卵子が排卵、それぞれ受精して発育したもので、兄弟姉妹が同じときに生まれるようなものです。不妊治療で排卵誘発剤を使ったり、体外受精で受精卵を二つ以上子宮に戻してできる多胎は卵子は別々(二卵性以上)になるのです。

 多胎は本来一人用の子宮の中で何人も育つわけですから、母体の負担は大変大きくなります。

 双子では妊娠30週くらいで生みつきくらいのお腹の大きさになってしまうので、早産になる場合がしばしばみられます。そのため産休も産前14週間取れるようになっていますが、やはり早産しやすいので安静が大変重要です。

 また妊娠中毒症にもなりやすいことが知られています。胎児の発育に差がないと順調に経過しますが、アンバランスが生じると、一時的に小さい胎児が弱ってしまうことがあり入院して検査する必要がでてきます。

 分娩は双子の場合、通常に分娩できる事も多いのですが、三つ子以上は帝王切開になることが多いでしょう。分娩時の出血も多くなりやすいですし、妊娠中からの疲労も残りますので、育児協力者は必ず必要になってきます。

○前置胎盤

 胎盤は正常では、子宮口からかなり離れた位置についていますが、子宮口の近く、場合によっては子宮口をおおうようについている胎盤を「前置胎盤」といいます。分娩が始まって子宮口が開いてくると、胎盤との間にずれが生じ胎盤がはがれて大出血を引き起こす可能性があります。そのために大出血になる前に帝王切開で分娩を終了させる必要があります。

 また胎盤の縁が子宮口にかかるくらいの軽いものは、通常の分娩ができる事もあります。

 胎盤と子宮口周辺のずれは、本格的な陣痛でなくても起こるので、突然出血することがあります。現在は超音波検査で胎盤の位置もよく調べられますので、前置胎盤はあらかじめ診断がつきます、お腹がはるようなことは避けるとか、出血があったらすぐ入院することなどの注意は必要です。

 原因が不明なことも少なくないのですが、受精卵が子宮に着床する部位が通常より下方であったことが考えられ、子宮筋腫や子宮奇形がその原因となり、また経産婦に多いことが知られています。

2012年6月 7日

妊娠中期・後期に起こる異常


○妊娠貧血

 女性は月経があるためと、男性に比べて食べる量が少ないために貧血になりやすいのですが、最近では偏食やダイエットが原因の貧血も少なくありません。

 胎児の成長には母体の中の貯蔵鉄が使われますが、貯蔵量が少ない場合は母体に必要な鉄分が胎児に優先的に供給されるため、母体は貧血になります。胎児が大きくなるとそれだけ鉄分を必要とするので、貧血は妊娠後期になると大変多くなります。

 貧血のまま分娩になると、母体は疲労のため微弱陣痛になったり、胎児への酸素供給が減少したり、分娩時の出血量他多くなり輸血の可能性が高くなるなどの危険があります。予防するためには鉄分、タンパク質、ビタミンなど食生活が重要です。鉄剤を服用すると胃が悪くなったり便秘や下痢をする人はよく相談してください。

○骨盤位(さかご)

 胎児は頭が一番大きくかたいので、頭から生まれてくる分娩がもっとも順調に行きます。それにくらべて頭がうえでお尻や足からの分娩は難産になりやすく、リスクが高たかいので、なるべく正常位に矯正したいのですが、約5パーセントは逆子のまま分娩となります。お知りが下の場合は通常の分娩も可能ですが、足の場合は現在は帝王切開することがほとんどとなります。

 妊娠中期までは逆子も多いのですが、妊娠32週ころにはほとんどが頭が下になってきます。妊娠28週ころになると、逆子の場合「胸膝位」を指導されます。これは胸と膝を床に付け腰を高く(お尻を高く)した姿勢で、ネコが前足で伸びをする姿勢に似ています、これを毎晩寝る前に10〜20分続けると、逆子が治ることが多いのです。外回転といって強制的に手で逆子を治す方法もありますが、危険があるため反対論も多く一般的ではありません。

 逆子になる原因は、前置胎盤など胎盤の位置が悪い場合、子宮の形の異常(子宮筋腫、子宮奇形など)、臍帯が首に巻きついたり、羊水過多などがあげられますが、原因不明のこともよくあります。

2012年6月 6日

妊娠中期・後期に起こる異常


○早産

 妊娠22週以降37週未満で分娩することを指します。週数が早ければ早いほど胎児の未熟性が強く生育が難しくなります。生まれたときの体重が1500グラム未満を弱小未熟児、1000グラム未満を超未熟児と呼ばれます。NICU(新生児集中治療室)がある施設では1000グラムあれば生育は困難ではありませんが、胎児にとっては子宮内が最も成長に適した場所であるのです。

 早産になりかかっている状態を「切迫早産」といいます。規則的なお腹のはりと出血がその症状ですから、早く診察を受けましょう。入院安静が第一で、子宮収縮抑制剤や抗生物質を使って治療します。破水が起こっていなければかなり効果が期待できます。破水している場合は、陣痛を抑えられないことが多く、また短時間で羊水中に病原菌が増殖する可能性も高くなるので、出産後NICUで適切な治療を受けたほうが良い場合もあります。

 原因の一つは子宮内の病原菌による炎症ではないかと最近言われていますが、それだけではありません。母体の疾患などが原因となることもあります。特に病気がなくても母体の疲労、冷え、旅行、セックスがきっかけとなる可能性があるので注意しましょう。

○妊娠中毒症

 高血圧、蛋白尿、浮腫の三つの状態があらわれ、妊娠という負荷に母体が耐えられない状態と考えられています。原因はまだわかりません。妊娠中期ころよりおこるものや、重症の場合は母子への影響が大きいです。

 妊娠中毒症になると、胎児への血流が減るうえに酸素や栄養の供給が十分おこなわれず、胎児は成長が悪くなり、成長が止まったり、生命がおびやかされたりします。母体もひどくなるとけいれんや意識消失、危険な状態になってしまいます。

 多胎、肥満、高齢の妊娠や持病として高血圧、腎臓病、糖尿病などをもつ人がかかりやすいといわれています。

 妊娠健診で発見されることも多いのできちんと受診しましょう。太りすぎ、塩分に注意すること、休養を十分にとり過労やストレスをためないようにしましょう。

治療
 治療の基本は、安静、減塩と高タンパク食でカロリーは控えます。水分の制限は必要ありません。自宅療養で効果のない場合は入院の必要があります。入院後は高血圧には血圧降下剤を使い利尿剤は通常使いません。

 胎児の状態の監視が重要で、成長や健康状態などを超音波や分娩監視装置により確認し、危険がせまっている場合は分娩を誘発したり、帝王切開で出産させることもあります。妊娠週数が早いと、いつ分娩するのが母子にとって一番良いのかを決めるのが難しくなります。

2012年6月 4日

妊娠のしくみ つづき


◎妊娠初期に起こる病気

○子宮外妊娠

 受精卵が子宮内以外の妊娠が継続できない場所に着床してしまう異常です。ほとんどは卵管におこることが多いのですが、卵管は細い管のため胎児の発育につれてふくらみ、破裂してしまいます。

症状
 妊娠の徴候に伴い、少量の出血、下腹部痛など流産と同じような症状が出ますが、何もないこともあります。最近では妊娠初期に診断でき、破裂前に治療(手術)できることが多くなりました。破裂した場合は、急な下腹部激痛とともに腹腔内に大出血し、ショック状態となり、輸血しながら緊急開腹手術をしないと生命にかかわります。

原因
 卵管内に癒着がある、卵管が細いなどのために受精卵が途中で止まって着床してしまうためにおこります。最近ではクラミジア感染などの性感染症による卵管炎の後遺症が多く、その他、人工妊娠中絶後の炎症なども上げられます。卵管の病変は左右両側に起こることが多いので、一度子宮外妊娠になった人は繰り返しやすくなる傾向があります。

治療
 破裂前なら腹腔鏡で、卵管切除がおこなわれます。小さい病変では、卵管切開や抗がん剤の注射も試されています。

○胞状奇胎

 本来は胎盤になるはずの絨毛が異常増殖して、イクラのような粒がたくさん子宮の中につまった状態で、胎児はいません。

 症状は妊娠の徴候と断続的な出血やお腹のはりですが、超音波検査で診断されます。受精卵の異常ですが原因がはっきりしていません。

 胞状奇胎と診断されたら子宮内容を外へ出すための手術がおこなわれます。一週間後にもう一度手術をして完全に取り除いたことを確認します。胎状奇胎は5〜10パーセント程度、子宮内に残った奇胎が「絨毛がん」に変化するからです。そのため胞状奇胎のあとは、最低一年は、ホルモンチを測定したり基礎体温を記録したり、通院する必要があります。その間は避妊が必要ですし、胸部のレントゲンや抗がん剤による治療がおこなわれることもあります。

 40歳以上の場合や子供が2〜3にいる人の場合は絨毛がんを予防するために子宮全摘がすすめられます。

2012年6月 3日

妊娠のしくみ つづき


◎妊娠初期に起こる病気

○流産

 妊娠22週未満で起きる妊娠の中断を指し、ほとんどは妊娠初期でおこります。

症状
 ほとんどが出血で始まりますが、妊娠初期では、症状のないまま超音波検査で胎児が育っていないことがわかることも多くあります。次に下腹部痛ですが、張った感じや鈍痛などから強い傷みになって出血が増えて塊が出てきます。かたまりの中に粘膜や胎児の一部が含まれていることがあります。

 妊娠中期以降では、分娩と同じ様な経過をたどり、出血からお腹が張って規則的な陣痛となって破水するか、もしくは最初からは水で始まることもあります。

 妊娠中、少量でも出血と下腹部痛が起きたらまず流産を疑いますので、異常が感じられたら早目の診察を受けるようにしましょう。

原因
 いま妊娠の約15パーセントは流産になるといわれ、母体の年齢とともに増加し40歳以上では25パーセントとなっています。超音波で胎児の心拍が確認できないことでわかる初期の流産は、初めから発育できない受精卵で、途中で成長を止めてしまった自然淘汰とされています。両親のせいではなく、染色体異常など胎児の異常がほとんどです。いったん胎児心拍が確認されてからの、妊娠12週くらいまでの流産も胎児の染色体異常などの胎児側の原因が多くなります。

 母体側の原因としては、子宮の異常(奇形、筋腫、頸管無力症など)、性感染症などの感染症、膠原病などの母体の病気が上げられます。

治療
 少量の出血や軽い下腹部痛の状態を「切迫流産」といい、安静、子宮収縮抑制剤などで治療できる場合もありますが、胎児の異常のために起きる流産はとめることはできません。

 胎児心拍数は通常妊娠6週くらいから超音波で確認できるようになります。それより前には胎児を入れる羊水の入った袋の成長を目安に妊娠の経過を見ていくのです。胎児の心拍が確認できれば、流産する可能性はかなり低くなります。このとき、妊娠週数が正しいものであることが必要で、特に月経不順の人は最終月経から推定すると間違ってしまうことがあります。そういうことから週一回程度で何回か超音波検査が繰り返されます。

 流産であるとの診断がされたら、子宮内用を外に出し、なかをきれいにする手術が必要になります。出血や下腹部痛という自覚症状のない流産も多く、納得しにくい場合もよくあるようです。長くそのままにしておくと、感染をおこすなどの可能性が高くなります。

○習慣流産(不育症)

 三回以上流産すると習慣流産といいます。原因はいろいろあるので、詳しい検査が必要です。その中で異常な自己抗体が存在し、血栓が胎盤の中にできるため流産がおこる場合は、アスピリンやステロイドによって治療できることがわかっています。また夫婦間の血液不適合には、夫のリンパ球を妻に注射することで妊娠が可能になっています。夫婦の染色体の異常には妊娠後に胎児の染色体検査がおこなわれています。

2012年6月 2日


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