■腹腔内臓器損傷
腹膜で囲まれた部分を腹腔といいます。このなかには、肝臓、脾臓、および胃、腸などの消化管の大部分のほかに、腸間膜や大網が存在します。
・脾臓損傷
左側胸部、上腹部の打撲や圧迫、刃物による創傷で生じます。
左上腹部に限局した鋭い痛みがおこり、しばしば吐き気や嘔吐が見られます。脾臓は血液のおおい臓器なので、損傷の程度が大きければ腹腔内に大出血し、出血性ショックをきたすことがありますから、多くは緊急開腹手術が必要になります。
また、打撲や圧迫による損傷では、約十パーセントが遅発性破裂といって、受傷後数日か数週間してから出血が起こります。このため脾臓損傷の恐れがあるときは、比較的長期にわたり観察が必要になります。