◎低血圧症
一時的に血圧が下がるのは、心臓や血管の働きが弱ったときとか、大出血のあとにくるものです。
いつも血圧が異常に低い状態というのは、1体質的に低い場合、2慢性の感染症、悪性腫瘍、重い貧血、3内分泌の病気(アジソン病、シモンズ病、粘液水腫など)、4栄養失調、5神経の病気などでおこります。
ふつう、血圧が低いというのは、最大血圧が100mmHg未満を指しますが、一般に男性よりも女性のほうが5から10ぐらい低く、ことに若い人では、もっと低くても何も自覚症状がなければ正常です。いくつぐらいなければ異常だとは決めにくいものです。
血圧が低くなる原因のわからない、体質的に血圧の低い場合を、本態性低血圧といいます。このような人の中で、寝ている状態では血圧が低くない場合もあり、血管の緊張の弱い人は起立した姿勢では血圧が低くなり、起立性低血圧と呼ばれます。この場合には、立ち上がるときに、めまいや立ちくらみを感じることが多く、動悸を訴える人もいます。
起立性低血圧のような血圧調整障害は、学童が長時間起立していると血圧が低下し脳貧血で倒れることがあるように、若い人にしばしば見られます。これは、血管迷走神経反射といって、反射的に血圧や心臓を抑制するはたらきをもつ副交感神経系の異常な緊張亢進によるものです。このような神経反射が原因で一時的に低血圧をおこし失神する状態として、他にせきや排尿時の失神が知られています。せきや排尿という行為に伴い、一時的に血管迷走神経反射が作動して、低血圧になります。
アルコールを飲んだり、お風呂から上がったりしたあとですでに心拍数があがったりした後ですでに心拍数が上がっている状態が存在すると、このような神経反射がおこりやすいのです。これは病気ではありません。
中枢神経の障害で手足の動きが悪く、尿の排泄が順調でない人や糖尿病の人にも起立性低血圧がありますが、この場合は、立ちくらみがおこって血圧が下がっても脈が速くならず、反射経路の悪いことが推測されます。
体質的に血圧が低いのは、痩せ型の人に多い傾向ですが、血圧が低くても、別に何の症状もない人もあります。
疲れやすい、めまいがする、動悸がするなどの、いろいろな訴えのある人は、診察を受けて、他の病気ではないことを診断されたら、血圧を高める薬が処方されることもありますが、多くは神経症の治療ですみます。低血圧のために生命にかかわることは少ないので、症状がなければほうっておいてよいでしょう。
起立性低血圧の人は、腹筋を強くする運動をしたり、立ち上がる前に足を屈伸してから、ゆっくりたつようにしたり、伸縮性の強いストッキングを使用して足に血が下がらないようにしたりします。それでも良くならないときは、血圧を上げる薬や、水分や塩分を体内にためるようなホルモン薬を使うこともあるでしょう。