◎ホルモンの働き つづき
ホルモンは常に一定の割合で分泌されているわけではありません。必要な時期に、必要な量が、必要な期間、分泌されます。ホルモンの分泌調節はホルモンの種類によって異なります。生体の変化が内分泌組織に伝わると、ホルモンの分泌が促進されたり抑制されます。例えば血液中のグルコースが増加すると、この情報が膵臓に感知されて糖濃度を下げるインスリン分泌が増加し、逆に糖濃度が低下すると(低血糖)、インスリンの分泌は低下し、糖濃度を上げる作用のあるホルモンが分泌されます。
また、ホルモンの種類によってはフィードバックという機構によって分泌が調整されます。例えば、甲状腺の甲状腺ホルモン分泌は下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)により、さらにTSHの分泌は視床下部ホルモンである甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TSH)により調節されます。もし血液中の甲状腺ホルモンが低下すると、それが視床下部や下垂体に伝えられます。その結果、TRH、TSHの分泌が増加して、ぞうかしたTSHは甲状腺を刺激して血液中の甲状腺ホルモンの濃度を正常に保つようにはたらきます。
逆に、甲状腺からのホルモン供給が過剰になると、この情報も視床下部や下垂体に伝えられ、その結果TSHの分泌は低下消失し、甲状腺からのホルモン供給が低下します。このような機構をネガティブフィードバック機構と呼びます。この機構は副腎コルチゾールの産出を刺激するACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とコルチゾールの間、下垂体ゴナドトロピン(卵巣や睾丸を刺激して性ホルモンの分泌や卵子の成熟、精子形成を刺激するホルモン)と性腺(女性の卵巣や男性の睾丸)から分泌される性ホルモンとの間でもみられるもので、血液中のホルモン濃度を一定に保つのに重要な役割を果たします。
またフィードバック機構以外の調節機構があります。ひとつはホルモンの日内変化(日内リズム)です。ACTHの分泌、したがって副腎コルチゾールの分泌は朝方に高く、夕方に低くなるリズムがあります。恐らく中枢神経系に存在する一種の時計が、このリズムを調節していると思われます。私たちがストレスを受けた場合には、コルチゾールをはじめ多くのホルモンが分泌されますが、これは中枢神経系へ入った情報が下垂体に伝えられて分泌が増加するためです。
成長や成熟、加齢に伴って分泌が変化するホルモンも少なくありません。下垂体ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌は、小児期ではきわめて低値ですが、思春期の少し前からしだいに分泌が増加します。これが性腺を刺激して、性ホルモンが増加し、二次成長がみられるようになります。
女性では更年期以降は卵巣機能が低下するため女性ホルモン分泌が低下し、負のフィードバック機構によってゴナドトロピンが増加します。男性でも加齢に従って睾丸機能が低下しますが、女性ほど明確ではありません。
また、成長ホルモンの分泌は思春期には顕著に増加します。成長が止まったのちの成人でも成長ホルモン分泌は持続するものの、加齢とともに分泌は低下します。一方で、生命の維持に不可欠な甲状腺ホルモンや副腎コルチゾールは加齢による変化はほとんどありません。