◎ホルモンの働き
わたしたちのからだが、絶えず変化する外部の環境に適応したり、外敵から身を守るためにはいくつかのしくみが必要です。この目的のために神経系、内分泌系、免疫系の三つが密接な関係を保ちながら、体の機能を調整しています。例えば精神的なストレスはホルモンの分泌を変化させ、ホルモン系の異状が神経系や免疫系の作用に影響します。内分泌系はホルモンを介して体の機能を調整するシステムです。ホルモンは脳下垂体をはじめ複数の内分泌腺から分泌される物質で、多くは血液に運ばれて他の組織にいき、そこでいろいろな作用がおこなわれます。
しかし一部のホルモンは血液を介さないで局所的に作用するものもあり、またホルモンの種類によっては複数の組織から分泌されるものもあります。最近では心臓や脂肪細胞など従来は内分泌組織とは考えられなかった組織からもある種のホルモンが分泌されていることもわかってきました。ホルモンはタンパク性ホルモン、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、その他に分類されますが、いずれもごく微量で作用を発揮します。ホルモンの作用は多彩ですが、1成長と成熟の調節、2生殖器の調節、3エネルギー代謝の調節、4ストレスに対する防御、と言う役割をになっています。成長には成長ホルモンや甲状腺ホルモンなど多くのホルモンが必要です。また性機能の発達や維持には性ホルモンが決定的な役割を果たします。
私たちが生きて行くためには必要量のエネルギーを消費し、残りを緊急時のために貯蔵しなければなりません。また、組織がうまく機能するためには血液中の電解質、糖分、脂質(コレステロールや中性脂肪)などが適切な濃度を保つ必要があり、これにも多くのホルモンが共同して調節します。さまざまなストレスに対する防御のためにもホルモンが必要です。
それではホルモンはどのように作用を発揮しているのでしょうか。各ホルモンはそれに対応する受容体(レセプター)と結合することにより作用を発揮します。受容体は細胞膜あるいは細胞核の中に存在する物質で、一定のホルモンのみを認識してこれと結合します。受容体が結合すると、それに続いていろいろな生化学的な反応がおこり、最終的にそのホルモンに特有な作用があらわれます。
ホルモン作用の特徴はひとつのホルモンが多数の機能を持っていることです。もうひとつの特徴は生体の一つの機能にたくさんのホルモンが関与することです。例えば血液中の糖(グルコース)濃度はインスリンのほか成長ホルモン、グルカゴン、コルチゾール、カテコールアミンなど複数のホルモンが調節します。