◎慢性甲状腺炎(橋本病)
○診断
甲状腺ホルモン濃度が低く、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の増加で診断は容易につくようです。橋本病では血液中には甲状腺の成分に対するいくつかの自己抗体が検出されます。機能が低下すると、血液中のコレステロールや中性脂肪が増加したり、肝機能の障害を起こしやすく、肝臓病として治療される場合もあります。まれに小児でも橋本病による甲状腺機能低下がみられる場合もあります。
機能低下があると、身体発育や精神発達も遅れます。甲状腺ホルモンは精神神経系や骨の成長にも必要なためです。
○治療
橋本病であっても機能が正常なら治療の必要はなく、定期的な検査で過ごせます。機能低下があれば甲状腺ホルモンの補給が必要になります。通常少量の甲状腺ホルモン(サイロキシン)からはじめられ、血液中の甲状腺ホルモンやTSH濃度を測定しながら増量し、濃度が正常化したら、以降は一定量の甲状腺ホルモンを服用します。
橋本病自体は回復することはないので一生にわたる甲状腺ホルモンの服用が必要となります。量が適切であれば、副作用はありません。甲状腺ホルモンを服用していても妊娠、出産、授乳に何の問題もありません。ただ、妊娠すると甲状腺ホルモンに対する需要が増すので、服用量を増やすこともあります。甲状腺機能低下状態では月経が不順になったり、妊娠しても流産の頻度が増加します。甲状腺ホルモンの濃度が正常化すれば、症状は数ヶ月以内に消失し、日常生活にも制限はありません。ただし、ヨード分を含む食品(こんぶなど)の大量の摂取は避ける必要があります。甲状腺機能が正常な橋本病患者でもヨードを大量に摂取すると、簡単に甲状腺機能が低下してしまいます。
ヨードは甲状腺ホルモンの材料として必要ですが、多量のヨードは甲状腺機能を抑制する作用もあるからです。