○糖尿病性腎症
高血糖の持続によって、腎臓の重要なろ過機能を行っている糸球体に変化がおこり、タンパク尿が出現し、やがて腎機能が徐々に低下し、血清クレアチニンの上昇、さらに腎不全へと進行する病気です。
糖尿病性腎症の早期発見早期治療が重要であり、早期発見には尿中アルブミンの検査が役立ちます。腎症の予防と治療には、血糖コントロールのみならず、血圧のコントロールが重要です。顕性腎症期になると血糖コントロールとともに降圧治療、タンパク制限食が必要です。慢性腎不全の状態になれば、やがて人工透析が必要となります。最近まで、新規に透析に導入される腎患者の第一位は腎炎でしたが、1998年には、初めて糖尿病性腎症が第一位となり、今後はますます増加するものと危惧されています。
○糖尿病性神経障害
足先のしびれ、冷感、ジンジンする痛みなどを訴える末梢神経障害と自律神経障害に分けられます。網膜症や腎症よりも早く現れる合併症であり、多くの糖尿病患者にみられます。
自覚症状としては、下肢に現れることが多く、遠位部(足先)から対象性に見られます。まれに、単一神経障害によって顔面神経まひ、動眼神経まひ、外転神経まひなどもみられます。
自律神経は内臓の働きなどを調節する神経で、その障害によって起立性低血圧(立ちくらみ)、排尿障害、下痢、便秘、胃腸障害、勃起障害、発汗異常など多彩な症状が出てきます。
神経障害の検査には、膝蓋腱反射やアキレス腱反射の減弱消失の有無、振動覚、神経伝達速度などがあります。
治療には、血糖コントロールが重要ですが、そのほかアルドース還元酸素阻害薬やビタミンB12製剤などがもちいられます。
○糖尿病性壊疽
糖尿病患者にみられる足病変のうち、最も重要なものは壊疽です。足の動脈硬化症による血行障害に末梢神経障害による感覚低下なども加わって皮膚や皮下組織の壊死をきたすもので、多くは激しい痛みを伴います。感染を合併することもしばしばです。
誘因としては靴ずれ、水疱形成、低温やけど、みずむし、外傷などで、ちょっとしたことから重大な事態に至ることもまれではありません。予防には足の清潔を心がけるとともに、適した靴を履くこと、毎日きちんと足先まで観察することなど日常生活におけるフットケアが大切です。