◎食物アレルギー
個人の素因、素質に基づいて、食物やそれに含まれる物質によりおこる生体に不都合な反応のうち、免疫反応によるものを食物アレルギー、それ以外の反応を食物不耐症といいます。
食物不耐症には、乳糖分解酵素欠損による牛乳不耐症などの代謝病、古いさばに含まれるヒスタミンなどの有害活性物質による反応、タートラジンなどの食物着色料によるアスピリンじんましん、ぜんそくなどの特異体質反応が含まれます。
一般に、食物アレルギーは乳幼児に多く、その後成長に伴い症状は消失するので成人には少ないといわれています。
小児における頻度は0.3〜2.2パーセント、アトピー性疾患をもつ小児における食物アレルギーは3〜25パーセントです。
○症状
大別すると食物を摂取して数分から数時間以内に出現する即時型反応と、それよりあとにあらわれる反応に分けられます。
即時型反応は個人の臓器の反応性や摂取した抗原の量、種類により症状が異なります。多くは数分以内に口内の違和感、腫脹感に続き、全身違和感、腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状、皮膚潮紅、じんましん、血管浮腫などの皮膚症状、喉頭浮腫、喘鳴、結膜炎、鼻炎など気道症状が、単独あるいは複合して出現します。
重症例ではショックにおちいることがあります。非即時型反応では、アトピー性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、気道過敏性亢進(ぜんそくの悪化)、食物性大腸炎、吸収不良症候群、血尿、ネフローゼ、片頭痛などが知られています。
胃腸管は食物を分解、吸収する過程で食物タンパク、細菌、ウイルスなどの外来抗原にさらされます。胃腸管は胃酸や各種消化酵素によって抗原を分解したり、粘液によって上皮をおおったりして抗原の進入を非免疫学的に阻止しています。
また、腸管からIgA抗体が分泌され、抗原の吸収を免疫学的にも阻害しています。乳幼児ではこうした機構が不十分なために、食物アレルギーになりやすい一因とされています。しかし、一般小児や成人でも抗原の一部はそのまま体内に侵入します。
大多数の人は食物として摂取する栄養抗原に対し、免疫反応がおこらない状態になっていますが、これが成立しない場合に食物アレルギーが発症します。
即時型の反応は1型アレルギーで発症しますが、その他の反応はしくみが不明のものがほとんどです。
○原因
個人の反応性の違いによりいろいろな食物がアレルギーの原因となりますが、小児では卵、牛乳、小麦、鶏肉、豚肉、大豆、米など、成人ではえび、かに、マグロ、さばなどの魚介類や、そば、卵、小麦などが原因となることが多いようです。
○治療
治療は除去食療法と薬物療法があります。
原因食物の除去は治療の大原則です。そばによるアナフィラキシーショックなどのように、少量で重篤な症状が誘発される場合、特に学童以降や成人では、原因食物を厳密に除去します。じんましんなど症状の軽い場合は十分過熱すると、摂取可能な場合もあります。
原因食物を除去するときは、それに変わる代用食を与え、栄養不足にならないようにします。1〜2年の間、原因食物を完全に除去すると、約三分の一の小児、成人で症状が消失します。
特に乳幼児では、成長とともに症状が消失することが少なくありません。一定の期間(小児の牛乳アレルギーなどでは通常2年間以上)除去後に、誘発試験を行い、確認しながら徐々に除去を緩めていきます。