腕の神経、血管が圧迫される
胸椎、肋骨、胸骨で構成され、心臓と肺を囲んでいる骨格を胸郭といいますが、心臓からの血管が胸郭の中から腕の方へ出て行くところ、すなわち鎖骨の上のくぼみ、鎖骨と肋骨の間の隙間を、胸郭出口と呼びます。
胸郭出口は、比較的狭くて窮屈な通路です。しかも、心臓から腕へ行く動脈と腕から心臓へもどる静脈ばかりでなく、脊髄から出た神経の束も一緒に、この隙間を通って腕へ伸びています。これらは神経血管束という太い束になって胸郭出口を通過したあと、わきの下で分岐し、腕のほうへ伸びていきます。
このため、胸郭出口を狭める異常が起こると、それでなくても狭い通路はいっそう窮屈になり、太い神経血管束が圧迫され、腕、手、首、肩のいたみやしびれなど、色々な症状が起こってきます。
このような状態を総称して、胸郭出口症候群と呼びます。圧迫の原因となる異常には、頸肋症候群、斜角筋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群の四つがあります。
頸肋症候群
どんな病気か
ふつうは胸椎に十二対ある肋骨が、ごくまれにですが生まれつき一対多く、肋骨がないはずの第七頸椎にもあるひとがいます。これを頸肋といいます。
胸郭出口の最初の通路は斜角筋三角と呼ばれ、前方を前斜角筋、後方を中斜角筋、そして底部を第一肋骨が構成しています。頸肋があれば、第一肋骨にかわって頸肋が斜角筋の底部を構成することになり、神経血管束をしたから圧迫します。