どんな病気か
前斜角筋、中斜角筋は、くびの運動に使われる筋肉ですが、これらが何らかの原因で刺激されて緊張すると斜角筋三角が小さくなり、神経血管束が圧迫されて、頸肋症候群と同じ症状が起こってきます。
原因
斜角筋の刺激状態、肩や鎖骨部の外傷でおこることがあります。しかし、外傷がなくてもこの病気になる人は多く、斜角筋を刺激する原因については不明です。
また、胸郭出口症候群全体に共通しますが、この病気になる人は比較的なで肩の方が多いように思います。なで肩とは、胸郭に対して上肢帯(鎖骨、肩甲骨)が普通の体型の人に比べて下がっている状態で、これは胸郭出口を狭めていると同時に、斜角筋の緊張を強める要因でもあると考えられます。
検査と診断
前斜角筋を圧迫すると上肢に放散痛が起こり、アドソンテストが陽性であれば、この病気と判断されます。また、治療もかねて前斜角筋に局所麻酔剤を注入すると症状が軽くなることも、診断の大きな決め手になります。
手術が必要な場合は、その前に斜角筋三角で鎖骨下動脈が圧迫され、狭窄を起こしていることを確認するために、動脈造影がおこなわれます。これは、鎖骨下動脈に造影剤を注入してさつえいするX線検査です。
治療
頸肋症候群の場合とほぼ同じように、前斜角筋や中斜角筋を緩めるためにマッサージをおこなったり、肩周りや、首の骨の捻れやバランスを調整していきます。
また、なで肩体型の人は、胴体と上肢を連結している肩甲帯筋群という筋肉を強化する運動をおこないます。なで肩でなくても、胸郭出口症候群の人は一般に肩甲帯筋が弱まっていることが多いので、その強化訓練をおこないます。
薬物療法や運動療法を続けても効果がなく、しかも痛みやシビレで腕が動かせないほど症状が強いときは、手術がおこなわれます。その場合、ふつうは前斜角筋を切りますが、一緒に中斜角筋を切ることもあります。