どんな病気か
主として頸脊髄から出て腕のほうへ伸びる神経の束(腕神経叢)が、鎖骨付近で損傷され、肩や腕の運動、知覚が麻痺するものです。
腕神経叢の損傷は首を横にねじり、肩を強く引き上げるような力が加わったときに起こり、圧倒的に多いのは、オートバイの事故で転倒した場合です。また、新生児に分娩時の牽引で生ずる分娩麻痺でも、腕神経叢麻痺が起こります。
原因
頸椎と胸椎の脊髄から出た神経(第五頸髄神経から第一胸髄神経まで)は、首の側方で集合して腕神経叢という太い神経の束になり、しだいに枝分かれしながら、肩、腕、指先まで伸びていきます。
腕神経叢は、まず斜角筋三角の中をとおり、次に鎖骨と第一肋骨に間を通過し、わきの下の前で腕に行く主な神経に分岐しますが、鎖骨と第一肋骨の間のところでは、三つの神経幹に分かれています。
一番上が上神経幹で、第五、第六頸髄神経からなり、肩と肘を支配しています。その下の中神経幹は第七頸髄神経からなり、一番下の下神経幹は第八頸髄、第一胸髄神経で構成されており、手と指を動かす神経幹です。
したがって、この神経叢が切断されたり、脊髄から引き抜かれたり(引き抜き損傷)すると、肩や腕が麻痺して動かなくなります。腕神経叢全体が損傷された場合は、肩から指先まで、腕全体が麻痺します。上神経幹が損傷されたものは上位型と呼ばれ、肩と肘が動かなくなります。下神経幹が損傷された下位型では、主として手指の運動まひが起こります。