◎上腕骨か上骨折
手をついて転倒することにより受傷します(特に子供に多い)。肘周辺の腫脹、疼痛、変形が見られます。合併損傷として神経損傷(特に前骨間神経まひ)や動脈損傷があり、麻痺の症状や循環障害には注意を要します。血行障害による前腕筋の壊死(ホルクマン拘縮)が生じると重篤な機能障害をきたします。
治療は、子供では整復位が得られればギプス固定を行います。整復位の保持が難しい場合はベット上で持続的に牽引を行うか、手術的に金具で固定することになります。後遺症としては内反肘変形が生じやすいことが上げられます。大人では転移がない場合を除き原則手術になるでしょう。
◎ホルクマン拘縮
筋膜でかこまれた筋の区画のなかの圧力が急激に上昇し、循環障害から最後は筋壊死に至る状態を筋区画症候群と呼びます。ホルクマン拘縮はこの筋区画症候群が前腕部に生じたもので、前腕以外の筋、神経が虚血壊死におちいり高度の手の変形、拘縮を生じる病態です。
上腕骨か上骨折などの骨折、軟部組織損傷、動脈損傷、上肢圧迫、やけどなどで生じます。前腕の筋内の圧力が上昇し、前腕の強い疼痛、腫脹、循環障害、麻痺などの症状が多くは受傷から数時間〜十数時間以内に出現します。急性期で内圧が30mmHg以上では圧を減ずるため上腕遠位から手のひらまで筋膜切開をおこない圧力を減少させる手術を緊急に行います。
◎肘内障
2〜5歳の子供で手をひっぱって発生します。急に泣き出して上肢を動かさなくなります。原因は前腕の二本の骨のうち、肘の外側にあるとう骨の関節に当たる部分が牽引されることにより靭帯の中にもぐりこみ、戻らなくなるからです。肘と前腕を持ち前腕を外側へ回す、もしくは内側へ回しながら肘を屈曲すると整復されますが、ときに整復されにくいこともあります。肘内障は繰り返しておこることがしばしばありますが、成長とともに発生しなくなります。