股関節は骨盤と大腿骨をつなぐ大きな関節です。骨盤側はソケットのような形をしていて臼蓋(きゅうがい)と呼ばれ、そのくぼみの中にボールのような形をしていて大腿骨頭と呼ばれる大腿骨の端部がはまり込んでいます。股関節は体重を支える重要な関節の一つで、股関節に異常があると立ったり歩いたりが困難になってしまいます。
◎先天性股関節脱臼
新生児や乳児で、大腿骨頭が骨盤の臼蓋のなかにきちんとはまらずに臼蓋から外にずれた状態になっていることがあり、先天性股関節脱臼と呼ばれます。はっきりした原因はわかっていませんが、遺伝的な要因、生まれたあとの股関節の位置のいずれもが発生に関係しているといわれています。
発生率はおよそ新生児1000人に一人で、女児に多く、女児の発生率は男児の5〜10倍にもなります。
早期発見、早期治療が重要です。治療にはまず装具が用いられますが、一歳未満で診断されて治療を始めた場合には装具による固定だけでたい体よい結果が得られます。逆に一歳以降に治療を始めた場合には装具だけでは完全に整復できない場合が多くなります。
先天性股関節脱臼が完全に整復されないまま成長すると、正常では大きくくぼんでいるはずの臼蓋がずっと浅い形となり、大腿骨頭が臼蓋のなかにしっかりはまり込めない状態になることがあります。これを臼蓋形成不全といいます。臼蓋形成不全があると変形性股関節症になりやすいので、症状が強くなくても変形性股関節症の発生を防ぐための手術が行われることもあります。