◎大腿骨近位部骨折
若年者で交通事故など外傷に伴う強い外力によっておこるものと、骨粗しょう症の傾向のある高齢者で転倒など比較的弱い外力によって生じるものがありますが、後者のほうが圧倒的に多く、高齢化により現在では毎年10万人以上の人が受傷しています。
大腿骨近位部の骨折は、骨折の部位により大きく二つに分けられ、治療法も異なりますが、どちらのタイプでも基本的に手術が必要です。骨折が大腿骨頭の球状の部分のすぐ下で生じるものは大腿骨頸部内側骨折と呼ばれます。このタイプの骨折では、ずれの程度によって骨折部を固定する手術か、大腿骨頭を取り除いて代わりに金属でできた人工の骨頭を入れる手術がおこなわれます。
もう一つのタイプは、骨折が大腿骨頸部の直下ではなく少し下の部分で起こるもので、大腿骨頸部外側骨折と呼ばれます。このタイプの骨折では通常骨折部を金属で固定する手術がおこなわれます。
以前、よい手術法がなかった時代にはこの骨折により寝たきりになり、ついには亡くなられる人が多かったことが知られています。このため現在ではこの骨折がおこった場合、高齢者であってもなるべく早く手術がおこなわれ、リハビリを開始するというのが治療の原則になっています。高齢者で転んだあと股関節部に痛みがあり歩けなくなった場合には、この骨折が疑われます。