◎頸椎椎間板ヘルニア
頸椎の椎間板組織が後方の靭帯(後縦靭帯)を部分的または完全に破って脱出し、脊髄や神経根を圧迫して、首や上肢の疼痛やしびれ、麻痺などの脊髄症状や神経根症状が出たものを頸椎椎間板ヘルニアといいます。中年以降に多く見られますが、頚椎症性脊髄症や頸椎症性神経根症と異なり、二十代や三十代の若い人にもしばしばみられます。
症状としては頸椎症性脊髄症や頸椎症性神経根症と同様で、くびや肩、腕や手の痛みやしびれ、筋力低下や知覚鈍まがみられます。進行すると字を書くことや箸、ボタンはめなどの手の運動障害や歩行障害といった脊髄症状がみられます。発症は頸椎症にくらべると急激で、痛みもより強いことが多いです。
診断はMIRによって、ヘルニアの突出により神経が圧迫されているようすが観察され、ときに脊髄の中の変化もとらえることができます。しかしMRIでは症状と関係のない椎間板の突出が高頻度に見られ、診断上注意されるところです。
椎間板の突出があるからといって症状がない場合もあるということです、逆に言えば症状の無い人の頸椎のMRIをとっても高頻度で椎間板の突出があるということになります。よほどヘルニアが突出していての神経的な痛みが生じている場合は頸椎椎間板ヘルニアとなりますが、突出が少なかったりする場合は、頸椎の捻れによる(骨のバランスによる)神経根障害も多く隠れているのかもしれません。
治療は頚椎症性神経根症と同様に保存的治療が行われ、くびや上肢の痛みを主訴としている神経根症の場合には、多くは保存的治療のみで軽快します。頸椎などにかかわる筋肉の緊張をとり、頚椎のねじれやズレなどを優しく矯正していくだけでも多くの場合軽快します。
しかし、痛みが長期にわたり持続し、生活や仕事の大きな支障になっている場合や手の運動障害や歩行障害などの脊髄症状がみられる場合には、手術療法がおこなわれることもあります。手術は首の前から椎間板ヘルニアを取り出し、その部分の背骨を固定する方法が一般的です。