◎閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)
おもに、20〜50歳の男性に起こる病気で、喫煙者に多いものです。四肢、特に下肢の動脈の内膜に炎症が起こり、症状が進んでくるとその血管がつまって、その先の足の血行が悪くなって、痛んだり、さらに壊死にまで発展することがあります。
この手足の状態を脱疽(だっそ)といいます。つまるっけっかんの部位は膝や肘よりも先の細い動脈です。したがって、指先など手足の先端に病変が生じやすいのです。
治療では、冷やさないようにしましょう、冬には悪くなる傾向があります。血管拡張薬、温浴、マッサージ、運動等で血行をうながし保温につとめ、タバコは厳禁です。
四肢先端の病変が潰瘍や壊死にまで進行した場合は、交感神経ブロックなどでよくなることがありますが、最終的には手術で指や足を切断せざるを得ないこともまれではありません。
◎閉塞性末梢動脈硬化症
動脈硬化でも閉塞性血栓性血管炎と同じような症状が起こりますが、この場合は閉塞性末梢動脈硬化症と呼ばれ、50歳以上の男性に多い病気です。糖尿病が合併しても足指の一部に壊死が起こることがあります。
はじめ、つまった血管のある足が冷たくなり、歩くと痛み、しばらく休むとおさまる、間欠性は行を呈し、さらに進むと、その足が白くなったり、チアノーゼが出たりして、足の脈拍が触れにくくなります。最終的には栄養が悪くなってくさってきます(脱疽)。
この状態では静かにしていても痛みがおこります。少しの傷も治りにくく、また脱毛や爪の変形が起こります。病気の進行が止まると、他の血管からわき道(側副血行路)が通じて、またよくなることもあります。動脈硬化性の末梢動脈閉塞では虚血性心疾患を合併することが多いので、心臓の検査を受ける必要があります。症状がどの段階まで進んでいるのかの目安として、フォンタン分類がよく使われます。
治療では、歩行距離が数百m以上で症状が軽いうちは、痛みが出現するまで下肢の運動をおこなうことによって副側血行路ができるようにつとめます。
薬物療法のみで満足できる改善が得られるのは軽症の場合のみで、歩行距離が200m以下にいちじるしく制限されているときや安静時にも疼痛などの症状があったり、潰瘍、壊死が合併している場合などは、手術療法によって血管バイパス術を受けることになります。壊死が進んでいる場合は足の切断を余儀なくされます。手術療法以外、あるいはそれに並行して、血管を収縮させる神経をブロックしたり、カテーテルによってバルーンでひろげたり、レーザーで焼いたりすることもあります。最近は骨髄の細胞を虚血部位に注射して血管新生をうながす治療も行われます。