◎ホルモンの病気とは
ホルモンの病気には、1分泌量の異常、2分泌時期の異常、3異常ホルモン分泌、4ホルモンの作用の異常(ホルモン受容体の異常)、5二次的なホルモン異常、6その他、があります。大部分は1の分泌量の異常で、分泌の過剰(機能亢進症)と分泌の低下ないし消失(機能低下症)に分類できます。
機能亢進症の原因は、ない分泌組織の良性・悪性腫瘍が過剰なホルモンを分泌する場合が多く、そのほかに本来はない分泌組織ではない組織(例えば肺)の腫瘍がホルモンを過剰に分泌する場合(異所性ホルモン産生腫瘍)があります。またバセドウ病のように抗体によって内分泌組織(バセドウ病の場合は甲状腺)が刺激されたり、内分泌組織が炎症などによって破壊され、組織から多量のホルモンが流れ出しても機能亢進症状が起きます。
機能低下症は、内分泌組織が1自己免疫性の炎症、2放射線、手術や腫瘍、3血管障害(出血や梗塞)、4感染など、により破壊される結果、ホルモンの産生が傷害されて生じます。まれに先天的に内分泌組織の欠損や、ホルモン産生遺伝子の異常によってホルモンがつくられないこともあります。また、摂取している食べ物や服用している薬剤によって内分泌組織の機能が抑制されることもあります。
分泌時期の異状による病気はまれですが、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)が通常より早く分泌が始まる思春期早発症(性早熟症)などがこれになります。
異状ホルモンによる病気は、ホルモン遺伝子の異状によって正常とは異なるホルモンが分泌されるまれなものです。また、ホルモン分泌が正常でも、その作用がはたらかない病気をホルモン抵抗症やホルモン不応症とよびます。多くはホルモン受容体の欠損など受容体の異状によるものです。ホルモン抵抗症の症状は機能低下症と似ています。
なお受容体異常症の中には機能亢進症となるものもあります。受容体の異状によってホルモンの結合がなくても、受容体が活性化されてしまうと考えられています。
二次的なホルモン異状は、本来はホルモンの病気ではなく、他の病気によってホルモン系の以上がみられるものです。たとえば拒食症(神経性食欲不振症)ではいろいろなホルモンの異状がみられますが、ホルモン組織の病気ではなく、治療によって体重が回復すればこれらの異状も正常化します。
そのほか、他の疾患に対して使用される薬剤や食事によって機能亢進あるいは機能低下を示すことがあります。内分泌組織自体に病変があっても機能自体はおかされていないこともよく見られます。