◎甲状腺機能亢進症(バセドウ病)つづき
若い女性に多い病気のため、妊娠や出産には注意が必要です。甲状腺機能が亢進している間は早産などの合併症が多くなるため、妊娠を避けるようにします。機能が正常化したら抗甲状腺薬を服用しても妊娠は差し支えありません。ただ抗甲状腺薬を多量に服用している場合には、薬剤が胎盤を通じて胎児に移行し、胎児の甲状腺機能を抑制する可能性があります。妊娠を希望されている場合や妊娠中の抗甲状腺薬の使用法は、専門医と相談されると良いでしょう。母親の血液中のTRAbの濃度が高い場合には、この抗体が赤ちゃんの甲状腺を刺激してバセドウ病を起こすことがあります。これが新生児バセドウ病です。出生後2〜3週間で自然に良くなりますが、この間治療が必要です。
抗甲状腺薬が原因の奇形については報告はありますが、まれなものと考えられています。
妊娠してから初めてバセドウ病が発見されることもあり、この場合も抗甲状腺薬を服用して母親の甲状腺機能を正常化することが大切です。抗甲状腺薬は母乳にもわずかに移行しますが、服用量が少なければ授乳もさしつかえありません。一般的には乳汁への移行の少ないPTUが使用され、四錠以下であればMMIでも差し支えないと報告されています。
バセドウ病は妊娠中には一般に軽快する傾向があります。出産後数ヶ月後に悪化することが多く、定期的なチェックが必要です。
目の症状に対しては症状に応じて対処します。眼球突出や眼けん挙上のため睡眠中に完全に目が閉じないで、角膜の炎症を起こすことがあります。睡眠前に点眼薬を使用したり、眼帯で保護する場合もあります。眼球突出がひどい場合には手術もおこなわれます。目の症状が強く、進行性の場合には副腎皮質ステロイド薬、利尿薬や目の後部に対する放射線治療をおこなわれることがありますが、眼科の専門医による診察をおすすめします。複視に対しては時期によっては手術も必要となります。