◎糖尿病の治療
○治療の目的
糖尿病は初期や一部を除いて根治しうる病気ではなく、コントロールしうる病気であるといわれています。治療の目的は、良好なコントロールを長期間にわたって維持し、網膜症、腎症、神経障害などの慢性合併症や糖尿病に併発しやすい動脈硬化症の発症や進行を抑えることにあります。その結果、糖尿病を持っていても、糖尿病をもたない人と変わらない生活の質を保ち、寿命をまっとうすることができれば、治療の目標は達成できたといえます。そのためにはどのような治療が必要なのでしょうか、糖尿病ではインスリンの作用不足に基づいて起こる病気ですから、乏しいインスリンを節約して、インスリンの効きかたを高めるような治療が何よりも有効です。このような目的にかなう方法が食事療法と運動療法です。
○食事療法
食事療法は糖尿病の病型にかかわらず、最も重要な治療です。高血糖を改善するためにインスリン注射が不可欠なタイプである1型糖尿びょの場合にも、食事療法が基本であることはかわりません。食習慣の是正が何よりも有効な2型糖尿病では、特に食事療法の効果が大きく、食事療法を適切に実行することによって、糖尿病の症状がなくなるのはもちろん、血糖値がいちじるしく改善することはしばしば報告されます。
肥満や食べすぎは、インスリン抵抗性を増大させる大きな要因ですから、食事療法によって肥満が是正できれば、インスリン抵抗性も軽減し、血糖のコントロールも改善するのです。経口糖尿病薬やインスリン治療を必要とする場合でも、食事療法の実践が前提となります。食事療法をおろそかにして、良いコントロールを達成することは困難です。