◎胎盤
受精卵の外側から絨毛と呼ばれる小さな突起が草の根のように子宮内膜の中に進入し周囲を融解し母体血の中に浮遊する状態となります。この血液の中から酸素や栄養を絨毛が取り込み胎児へと送ります。母体血と胎児血は薄い膜で接触しますがまじることはありません。この絨毛組織と子宮内膜の一部が一緒になって胎盤を形成します。胎盤の形成は妊娠二か月末に始まり四ヶ月末に完成します。妊娠末期の胎盤は、直径約20センチ、厚さ約3センチ、重さ約500グラムくらいの円盤状のかたまりです。臍帯が付着し、卵膜に覆われている側が胎児側で羊水に接し、裏側が母体側で子宮内に接しています。
○胎盤の働き
1・ホルモンの合成分泌・・・妊娠維持に必要なホルモンが分泌されます。妊娠初期から、絨毛性ゴナドトロピンが多量に分泌され母体の尿中に出て、妊娠反応として検出されます。ほかにヒト胎盤性ラクトーゲンや、エストロゲン、プロゲステロンなど、妊娠の維持、分娩や授乳の準備に重要なホルモンが多量に分泌されるのです。
2・栄養物質の輸送と老廃物の排泄・・・母体血中に含まれる糖質、タンパク質、脂質をはじめ、水分、ミネラル、ビタミンなどあらゆる栄養素は絨毛から吸収され臍帯血管を通って胎児へ運ばれます。いっぽう胎児の体内で生まれた尿素などの老廃物は胎盤から母体血中に排泄されます。
3・酸素と二酸化炭素の交換・・・胎児は肺で呼吸していないので、肺から酸素を取り込むことができません。母体が肺から取り入れた酸素は母体血から絨毛の薄い膜を通って胎児の赤血球に取り込まれ胎児に提供され、胎児から生じた二酸化炭素は逆に胎児血から母体血に吸収されて母体の肺から排出されるのです。
4・その他・・・さまざまな酸素の産生、ウイルス以外の病原菌の通過を防ぐ作用があります。