◎心臓と血管の病気
○心臓のしくみと働き
心臓は血液を全身に送るポンプの機能をしています。心臓は四つの部屋から成り立っていて、左右の部屋は中隔という壁で仕切られ、心房と心室は房室弁を介してつながっています。
酸素がたくさん含まれる血液(動脈血)は、左心室から大動脈を経て全身へ送られます。それぞれの組織で酸素が消費されたあと、酸素が少ない静脈血となり、それぞれの静脈から上大静脈と下大静脈に注ぎ込み、右心房に戻ります。
静脈血はさらに右心房から三尖弁を経て右心室に入り、肺動脈から肺へ送られます。呼吸により肺で血液に酸素が取り込まれ、再び動脈血となって、肺静脈から左心房に戻り、僧房弁を介して左心室に入ります。この心臓のポンプ作用による血液循環によって、全身に酸素や栄養がいきわたるのです。
◎先天性心疾患
心臓のかたちが正常に作られなかった生まれつきの病気で、全出世児の1パーセントに存在します。その原因は多くの遺伝子が関与しているとされ、現在でも一部しかあきらかではありません。
症状
症状は疾患によって異なりますが、心臓の血液を全身に送るポンプ機能の低下による心不全症状(哺乳不良、体重増加不良、汗を多くかく、呼吸や脈拍が速くなったりする)やチアノーゼが出現します。
検査
診察では身長、体重を測定し、発育が順調かどうかを調べます。また心臓の雑音を聴取することによって、どのような病気かを推測することができます。
心不全により肝臓がはれることがるので、おなかをさわります。
検査は心電図、胸部レントゲン検査、超音波検査などがおこなわれます。心電図では不整脈の有無や、心肥大の有無がわかります。また胸部レントゲン検査では、心臓の拡大の有無や肺へいく血液量の増減がわかります。
超音波検査では心臓の形態と動きのほか、血液の流れも観察することができます。さらに、入院のうえ、太ももの血管からカテーテルの管を心臓まで進め、心臓内の圧や血液の酸素量を調べたり、造影剤を注入したりする心臓カテーテル検査が必要な場合もあります。
治療
内科治療は、利尿薬(尿を多く出して余分な水分を体外に出して、心臓の負担を軽くする薬)や強心薬(心臓の働きを増強する薬)を内服します。最終的には外科手術が必要となります。手術の方法や器具が改良され、いままで手術が不可能であった病気が手術できるようになったり、手術による死亡率がいちじるしく下がっています。
乳児期後半以降の手術では、無輸血でおこなえる施設もあり、輸血後肝炎などの心配がなくなりました。
しかし、小児の心臓の手術は最も熟練を要する分野で、特に複雑心奇形といわれる複数の心奇形を有する心臓の手術や、新生児期、乳児期早期の手術は、施設が限られてきます。そのため、どの施設で手術をしてもらうかを担当の医師とよく話し合う必要があります。
注意
日常生活の注意事項も必要です。
心不全やチアノーゼが軽度であれば、予防接種は通常どうり行い、むしろ積極的におこなって病気を予防することが大切です。
心不全やチアノーゼがある患者は抵抗力が弱く、風邪を引きやすいので注意が必要です。風邪を引けば肺炎になりやすく、肺炎になれば心不全症状やチアノーゼは悪化します。
具体的には、人ごみに連れて行かない、家族もかぜを引かないように注意することが大切です。心不全症状やチアノーゼがある患者は、運動制限も必要です。主治医に運動管理区分表を作成してもらい学校に提出します。
また、心臓の病気のために血液の流れた速いところができると、心臓や血管の内膜が傷害され、そこに細菌が付着しやすくなり、細菌性心内膜炎という重症な病気にかかりやすい状態になっています。
特に、口内の雑菌が体に入り、細菌性心内膜炎を起こすことが多いので、虫歯がひどくなって歯を抜くときなどは、必ず処置前に抗生物質を服用します。日ごろから虫歯には注意することが大切で、歯科医にかかるときは、あらかじめ心臓に病気があることを伝えておきましょう。
もし入院が必要な程度の重症度であれば、公的な医療費助成制度(小児慢性特定疾患など)があるので、手続きをとるようにしましょう。手術の費用も育成医療制度によって、公費負担となります。