◎心臓と血管の病気
○心室中隔欠損
左右の心室を隔てている心室中隔に孔があいている病気で、先天性疾患の中で最も頻度の高い病気です。心臓が収縮するときに圧力の高い左心室から低い右心室へ血液が流れてしまい、肺へいく血流量が増加し、その血液が再び心臓へ戻るので、心臓に負担がかかります。
孔が大きいものほど重症で、生後一ヶ月過ぎから心不全症状があらわれます。孔が小さければ無症状で、心不全も出現しません。
治療は、利尿薬や強心薬を服用しますが、心不全が改善しなければ乳児期に手術が必要となることもあります。
状態が安定していれば就学前に手術を行います。手術は人工心肺を持ち手心臓を停止させた状態で心臓を切り開き、当て布(自己心膜やウマ心膜など)で多い縫い合わせて穴をふさぎます。手術が必要なのにそのままにしておくと、肺高血圧が進行し、重度になると右心室から左心室へ静脈血が流れ込みチアノーゼを呈するアイゼンメンゲル症候群になり、手術ができず手遅れになってしまいます。
特にダウン症候群では肺高血圧の進行が早く、乳児期に高度の肺高血圧を呈し、手術ができなくなる可能性があります。小さな穴で心臓に負担がかかっていない場合は、手術は必要ありません。3〜4歳までに自然閉鎖することもあります。いっぽう、孔が小さくても、感染性心内膜炎(心臓内に細菌のかたまりが付着するために全身に細菌がまかれる重篤な病気)の予防のために、抜歯などのときには、あらかじめ抗生物質を内服す必要があります。
また、孔の大きさに関係なく、孔が大動脈弁に近いと弁が孔に落ち込み変形をきたし、手術が必要となることもあります。